世界的な自動車産業の発展に伴い、自動車の骨格を支える高強度鋼板の技術競争が一層激化する中、日中韓の鉄鋼大手が対峙する特許紛争が展開された。2024年7月3日、日本製鉄株式会社が保有する自動車用鋼板に関する特許(特許番号:ZL201280016850.X)について、中国国家知識産権局は、全請求項に対して無効との判断を下した。
本件特許は、熱間プレス成形によって製造される高強度部材に関するもので、耐食性向上を目的とした特定のAl-Fe合金めっき層の使用技術が保護対象となっていた。これに対し、中国の育材堂(蘇州)、宝山鋼鉄、凌雲長春、そして韓国のPOSCOが、新規性および進歩性の欠如などを理由に無効審判を請求した。
審理の焦点となったのは、中国側が提出した「公然実施による技術公開」に基づく証拠であった。中国企業は、イタリアで中古のフィアット500を公証人立ち会いのもと購入・解体し、主要部品を中国へ持ち帰って検査を実施した。その結果、特許請求項に示された技術的構成と一致することを確認し、対象技術が出願前から公知であったと主張した。
日本製鉄は、車両部品が後に交換された可能性などを指摘し反論したものの、説得力ある証拠の提示には至らなかった。審判部は、中国側の証拠が一貫性と信頼性を備えていると判断し、請求項1〜6について新規性および進歩性が欠如しているとして、特許全体の無効を決定した。
本件は、中国における知的財産実務において「公然実施による公開」証拠の評価基準を明確に示した象徴的な事例とされており、特許の市場的影響も大きい。関連する特許侵害訴訟の総額は約1億元にのぼり、「年度特許無効審判十大事案」にも選出された。
出所:中国知識産権資訊網
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