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1 August 2023

商標法第五次改正草案の「重複出願の禁止」に関する考え

K
Kangxin

Contributor

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今年の初め、『商標法』第五次改正草案(意見募集稿)...
China Intellectual Property

今年の初め、『商標法』第五次改正草案(意見募集稿)(以下、『草案』)が公布され、悪質な商標登録や商標の「溜め込み」行為を取り締まる国の決意が示されている。筆者が商標代理人として、その改正に嬉しく思っており、積極的に意見を申し出ている。本記事では、「重複出願の禁止」に関わる規定を紹介しながら、コメントする。

『草案』における「重複出願の禁止」に関わる規定:

第 14 条 登録出願する商標は、容易に識別できる特徴を有し、公序良俗に違反せず、他人が以前に取得した法的権利または利益と抵触してはならない。

別段の定めがない限り、同一の出願人は、同一の商品またはサービスについて同一の商標を 1 つだけ登録しなくてはならない。

第21条【重複登録の禁止】以下に掲げる例外的な事由がある場合、または出願人が元の登録商標の抹消に同意する場合を除き、出願人が同一の商品で先に出願し、既に登録されているもの、又は出願日前の 1 年以内に公告抹消、取消、無効宣告された先行商標と同一のものであってはならない。

(一)生産経営上の必要性に応じて、実際に使用されている先行商標を基に微細な改善を行った場合であって、出願人が区別を説明することができる場合

(二)出願人の責めに帰することができない事由により先行商標が更新できなかった場合

(三)適時に商標使用説明がなされなかったことで先行登録商標が抹消されたが、当該先行商標が実際に使用されていた場合

(四)出願人の責めに帰することができない事由により、先行商標が3 年不使用取消手続において使用証拠を提供できなかったために取り消されたが、当該先行商標が実際に使用されていた場合

(五)先行商標が他人の先行権利又は権益と衝突することで無効宣告を受けたが、当該先行権利又は権益が既に存在しなくなった場合

(六)商標登録を繰り返し又は新たに出願するその他の正当な理由がある場合

第14条、第21条の改正案には、「重複登録の禁止」の定義が規定された。「重複登録の禁止」規定の目的について、改正草案の説明には、登録不使用、商標の「溜め込み」、放置商標、循環登録なのキーワードを含む、中国商標の現在の幾つかの問題点が言い及ばれた。これらのキーワードから見ると、今回の商標法改正の目的は、「登録重視、使用軽視」の現状を変えること、つまり登録商標をできる限り使用できるようにし、実際にビジネスで試用されていない商標を少しずつ取り消し、商標資源を開放し、需要のある企業/個人が商標の登録を取得できるようにすることである。

一、登録不使用

状況1

出願人Aの登録商標は、登録認可後3年間使用されていないため、商標法の規定によれば、当該商標が他人により不使用取り消される可能性が極めて高いと思われる。この場合、商標が取り消されるリスクに対する最も簡単な解決策は、3 年ごとに登録することである。

状況2

多くの有名ブランドは、他の区分の商品やサービスにおいて他人に悪意により登録されることが多く、有名ブランドの権利者として、自社利益を守るために、やむを得ず異議申し立てや無効審判請求を繰り返し、多大な時間や金銭を浪費した。また、異議申立と無効審判の勝訴率は 100% ではないため、多くの有名ブランドが 45 の区分で自社の商標を出願する方法で対応している。実際には、その中、多くの非コア区分の商標はビジネスで使用しないが、自社商標が抜駆け登録されたり希釈化されたりすることを防止するために、防衛の目的で 3 年ごとに再登録するしかない。このような商標は、殆ど使用されない。

上記の状況1 において、その商標は実際に市場でまったく使用されない場合、「重複登録の禁止」における主な取り締まり対象に該当するため、制止されるべきである。一方、状況2 は、多くの有名ブランドが困っている問題であり、明らかに、「重複登録の禁止」だけであると、バランスを取りにくい。この場合、「防御商標」の概念を導入することが考えられ、また既に馳名商標になった商標について、画一的に処理するではなく、普通の商標よりも強い保護力を与えたほうが良いと考えている。

上記第 21 条には、「出願人が元の登録商標の抹消に同意する場合を除き」と規定されているが、3 年ごとに再登録し、同時に元の登録を取り消すようにすれば、上記状況1 と 状況2 の登録不使用の目的を達成できる。したがって、「重複登録の禁止」には、上記行為を制止するための規定を定められるべきであると考えれいる。

二、循環登録

状況3

悪意により抜駆け登録された商標が権利者に無効審判を請求された後、その抜駆け登録人は商標が無効にされることを回避するために、何回も重複な出願をする。

状況4

現行の商標法では審査官の審理期間が定められており、審査期間を遵守し審査の効率化を図るため、商標評審委員会は2018年に発行した「事件審理業務の新動向」において、審理中断の条件を改正した。そのうち、引用商標が既に登録査定され、無効審判や取消審判(審決取消審判を含む)などの手続きが進行中である場合、その手続きの開始時期が当該出願商標の出願日よりも早い場合、審理を中止すると規定した。即ち、引用商標に対する無効審判、取消審判、審決取消審判が出願商標の出願日後に開始した場合、出願商標の拒絶査定不服審判の際に、それら審判における引用商標の審理結果を待たない。そのため、下記のような状況がよく発生する。つまり、商標出願の前に、引用商標が取消審判請求され、さらにその取消審判が審決取消審判段階になる場合、その審決取消審判の開始日が上記商標出願日より遅いため、出願商標の拒絶査定不服審判の際に、引用商標の審決取消審判の審理結果が待たされない。この場合、出願商標の拒絶査定不服審判を請求した後、審決取消審判における引用商標の審理結果が待たされることを確保するために、再度に商標登録出願を提出する必要がある。このように、多くの案件は上記のような循環に入る。実は、この現象を引き起こした本質的な原因は、審理期限の規定と審理中止の基準と矛盾することである。

上記状況3について、必ず制止する必要があると思われる。但し、状況4は、出願人が遭遇している実際の困難であるため、この場合、出願人が重複出願を行うのはやむを得ない。このよう場合、一切制止することではなく、出願人の実際の困難を考慮し、ある程度審理を中止することにより循環登録を解決することが望まれる

登録不使用や循環登録などの問題に対して、今回の改正案で提案されている解決策は、「重複登録の禁止」だけでなく、「登録から5年後に使用の証拠を提出する」など、様々な提案もあり、国が現状を変える決心が示されている。筆者もさらに健全で完備な商標法環境を期待している。

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.

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