1. 2024年8月1日、 AIに対する包括的な規制である EU AI規則が発効(上)
(1) はじめに
人工知能(AI)が急速に進歩し、あらゆる産業に浸透する中、EUは、この革新的な技術がもたらす課題と機会に対応するための重要な一歩を踏み出しました1。EU AI規則(AI Act、以下「AI規則」といいます。)は、生成AIに対処するための世界初の包括的な法的枠組みを構築するものです。生成AIは多くの機会をもたらす一方、知的財産権の侵害やホワイトカラーの仕事が失われるのではないかという懸念、AIの誤った利用や誤情報問題など、関連する多くの問題をもたらし、この技術のリスクも深く認識されるようになりました。
AI規則は、AIの利用について、安全性、透明性、基本的人権の尊重を確保しながら、AIの開発と普及を促進することを目的としています。AI規則は、EU内で事業を展開している企業に広範囲にわたる影響を及ぼすだけでなく、世界初のAIに対する包括的規制であるため、欧州外で事業を 展開している企業にも影響を与える可能性が高いと考えられます。現在、米国、カナダ、英国、韓国、インド、シンガポールなどの
AI大国が、どのようなAIに関する政策を採用すべきかを検討し始めており、EUのAI規則の展開を注意深く見守っていると考えられます。本ニュースレターでは、この新しい規制に対応する必要のある企業への影響に焦点を当て、AI規則の概要を説明します。
2024年7月12日、AI規則はEU官報で公布されました。規則の条文は確定したものであり、AI規則は2024年8月1日に発効します。その規定は、以下のとおりのタイムテーブルに従って段階的適用されることになります。
(2) リスクベースのアプローチ
AI規則は、人工知能システム(AIシステム)を、「さまざまなレベルの自律性で動作するように設計されており、明示的又は黙示的な目標のために、物理的又は仮想の環境に影響を与え得る予測、コンテンツ、推奨、若しくは決定などの出力を生成する方法を、受信した入力から推測する機械ベースのシステム」と定義しています。この広範な定義は、現在存在しない生成的知能の形態を含むことを意図するものです。この定義を踏まえ、AI規則は多様なAIシステムを規制するために、様々な手段を採用し、個人や社会にもたらすリスクのレベルに応じて分類しています。このアプローチは、より対象を絞った比例的な規制の枠組みを可能にし、最も厳しい規制が最もリスクの高いAIの利用にのみ適用されるようにすることを目的とするものです。AI規則では、個々のAIシステムは次の4つのカテゴリーのいずれかに分類されます。
- 最小リスク: 現在個人が使用しているAIシステムの大半はこのカテゴリーに分類される可能性が高く、AI規則の下で特定の規制を受けることはありません。
- 限定的なリスク: チャットボットやディープフェイクなど、より限定的なリスクを持つAIシステムは、ユーザーがAIシステムと対話していることを自覚できることを確保するための透明性確保の義務を負います。
- 高リスク: 安全上のリスクがあると特定されたAIシステムは、市場に投入される前に厳格な要
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