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1 September 2025

2024年専利復審・無効審判の典型事例判決要点集(一)

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Kangxin

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国家知識産権局専利局復審・無効審査部は、専利復審・無効審判事件における法律適用を解説し、各技術分野の専利審査の最新実務を紹介
China Intellectual Property

国家知識産権局専利局復審・無効審査部は、専利復審・無効審判事件における法律適用を解説し、各技術分野の専利審査の最新実務を紹介するため、2024年に終結した事件の中から代表的な59件を選定し、判決の要点72点を抽出し、業界の研究と参考のために「専利復審・無効審判の典型事例判決要点集(2024年)」を刊行した。

I. 信義誠実の原則

1. 「信義誠実の違反」を無効理由としての立証と説明

【事件番号】 4W117458 亜硫酸金ナトリウムを用いたシアンを含まない金電気めっき液とその電気めっきプロセス

【判決の要点】「専利法実施細則」第11条は、信義誠実の原則に違反する専利出願行為に関する規定であり、専利の技術案自体に欠陥がある(進歩性の欠如、明細書の開示不十分など)こととは区別される。この規定を無効理由とする場合、出願人は十分な証拠を提出する義務を負い、提出された証拠に基づき、信義誠実の原則に違反しているとされる理由について詳細な説明を行わなければならない。

II. 特許権が付与されない対象

2. 専利審査と食品安全監督の協同・分担

【事件番号】 4W118080 腸管免疫機能調節のための母乳オリゴ糖組成物及びその応用

【判決の要点】食品分野の専利が、専利法第5条に定義される「公共の利益を害する」か否かを判断する上で、食品安全監督に関する法律、規則、国家規格といった規範文書が重要な参考資料となる。但し、専利制度と食品安全監督制度の目的と機能は異なる。食品安全監督の目的は、食品の安全性を確保するために食品の製造・流通を規制することであるのに対し、専利制度の目的は、発明・創造を促進することである。研究開発と専利出願は、通常、製造販売許可の申請に先行するため、食品発明専利におけるすべての原材料が、食品原料または食品添加物として承認されている関連カタログまたは規格に定められたものから選ばれなければならないと要件とすることは、市場関係者の技術革新を阻害する可能性がある。

3. 食品発明専利における食品添加物関連事項の審査原則

【事件番号】 4W118080 腸管免疫機能調節のための母乳オリゴ糖組成物及びその応用

【判決の要点】ある物質が一定の範囲内で食品の調理に使用する上で安全であると認められる証拠があり、かつ、その物質を食品の調理に使用することが人の健康にリスクをもたらすという証拠がない場合、たとえその物質が食品添加物としての使用が承認されていない場合であっても、食品発明におけるその物質の使用は必ずしも公共の利益の侵害に該当するものではない。

食品添加物として使用することが承認されている物質については、発明における当該物質の濃度が既存の基準で許容されている量を超えているが、当該物質の安全性および食品の調理におけるその濃度が業界内で広く認識されており、既存の基準で許容されている量を超えて食品の調理に使用することで人体への健康リスクが生じるという証拠がない場合、公共の利益の侵害に必ず該当するという認定は適切ではない。

III. 既存技術及び既存設計

(I) 出版物の公開

4. 医薬品規格の文書が公開になるか否かの判断

【事件番号】 4W116478 大腿骨頭壊死の治療のための中医薬組成物及びその製造方法

【判決の要点】医薬品管理局や医薬品検査研究所などの特定の機関に提出された登録医薬品の品質規格については、通常、閲覧が指定された担当者に限定されており、専利法に定義される公開には該当しない。

5. 医薬品添付文書の公開日の確定

【事件番号】 4W116478 大腿骨頭壊死の治療のための中医薬組成物及びその調製方法

【判決の要点】医薬品に複数バージョンの添付文書があり、販売レシートに特定の添付文書のバージョンが明記されていない場合、販売レシートに記載されている医薬品名と販売日のみにより、特定バージョンの添付文書の公開日を証明することはできない。

(II) 使用による公開

6. 販売された製品の真実性及び公開日の認定

【事件番号】 5W135377 照明機構及び脱毛装置

【判決の要点】電子商取引プラットフォームの「下取り」を通じて複数の消費者から同一モデルの製品を取得し、その取得過程及び取引情報が公証され、保存されている場合、これらの製品が同一の構造を有し、使用中に明らかな変更又は代替の痕跡が発見されなかった場合、十分な反証がない限り、当該製品は取引スナップショットが生成された日に電子商取引プラットフォーム上で公開販売されたと認定することができる。

7. 計量機器製品の公開日の証明

【事件番号】 5W135507 ガスメーター信号取得装置

【判決の要点】水道、電気、ガスの計量機器については、計量機器に表示されるメーターの指示値がメーターの支払記録に記載されている購入数と一致し、かつ、関連する鑑定書においてメーターが分解、または修理されていないことが示されている場合、メーターの指示値は設置および使用開始以降の累積計測流体使用量を表すものとみなすことができる。メーターは初回支払日から既に「使用による公開」の状態になり、初回支払日がメーターの公開日と推定されることができる。

8. 「展示による公開」の主張に関する証拠の認定

【事件番号】 6W116747 自転車(婦人用)

【判決の要点】申立人は、ウェブサイトAに掲載された写真は、本件意匠設計が出願日前に展示会Bで公開展示されていたことを証明していると主張した。当該写真はウェブサイトのユーザーによってアップロードされ、ウェブページに表示される「展示会情報」も当該ユーザーによって編集・入力されており、ウェブページには写真のアップロード時刻が記載されておらず、展示会Bに関連する他の証拠に示されているブース情報は写真のブース情報と明らかに矛盾している場合、当該写真は展示会Bの状況を正確に表していることを証明するには不十分であり、したがって、本件意匠設計が出願日前に展示会Bで公開展示されていたことを証明することはできない。

9. 特別管理場所における「使用による公開」の認定

【事件番号】 6W124834 スライド式セキュリティウォール

【判決の要点】特別管理場所に設置された製品については、当該場所に一定の来訪者資格とアクセス手順が設けられ、場所内の一部が閉鎖されているとしても、製品が閉鎖区域ではなく当該場所の入口付近に設置され、入口を通過するすべての人が直接観察できる場合、特定の対象のみがアクセスできる機密環境に設置されているのではなく、公衆がアクセスしようとすればすぐにアクセスできるものとみなされるべきであり、専利法上の開示に該当する。

10. 出願日前に公開販売された製品の具体的な構造の証明

【事件番号】 5W135632 地下作業面用油圧式支持位置決めプラットフォーム

【判決の要点】 製造業者の特定の製品モデルが、本件専利の出願日前に既に公開販売されており、異なる情報源からの複数の証拠はいずれにも当該特定の製品モデルの具体的な構造が記載されており、しかも相互に裏付けている場合、反証がない限り、たとえ当該証拠は出願日後に公開されたとしても、出願日前に既に公開販売されていた当該特定モデルの製品の具体的な構造の証明に用いられる。

(III) インターネットによる開示

11. 通信技術標準提案の真実性及び公開日の認定

【事件番号】4W111978 画像復号装置及び画像復号方法

【判決の要点】先行技術証拠として提出された技術標準提案については、その真実性及び公開日は、標準化団体のウェブサイトの権威、当該団体の業務方法及び会員構成、サーバの目的等の要素に基づいて判断することができる。国際標準化機関である国際電気通信連合(ITU)は、通常、標準化会議に先立ち、参加者がダウンロードして議論できるよう、ITUの公式FTPウェブサイトに標準提案をアップロードする。アップロード日はシステムによって自動的に生成され、社会公衆もウェブサイトにアクセスして関連技術文書を入手することができる。上記の全ての要素を考慮し、反証がない限り、ITU標準提案の真実性を認め、そのアップロード日を公開日とみなすべきである。

12. インターネット・アーカイブにおけるウェブアーカイブの公開日の認定

【事件番号】 4W116322/4W116768 多機能浄水器

【判決の要点】インターネット・アーカイブのウェブアーカイブを先行技術証拠として使用する場合、公開日はウェブサイトの仕組みを結びつけて認定すべきである。第一に、インターネット・アーカイブは、クロールしてアーカイブする各ウェブページにURLを割り当てる。URL内の特定の数値フィールドは、ウェブページがクロールされアーカイブされた時刻を表す。第二に、ウェブページ内の画像などの要素は複数回クロールされる場合があり、それぞれに異なるクロール時刻がある。したがって、ウェブページ・アーカイブとその中の画像のクロール時刻は異なる場合がある。最後に、ウェブサイトではアーカイブされたファイルに体系的かつ一貫したURLが割り当てられているため、ウェブサイトにアーカイブされたウェブページと画像のURLは、同じ命名規則と形式に従う必要がある。したがって、反証がない限り、画像 URL 内の日時情報を含む数値フィールドは、画像のクロールとアーカイブの日付、つまり画像がインターネット アーカイブの Web サイトで公開された日付と見なすことができる。

IV.新規性

13.新規性判断における単独比較の原則の理解

【事件番号】 4W117946/4W117974 導電性接着剤

【判決の要点】先行技術文献には、市販されている化学製品の名称は開示されているが、その化学製品の物理的及び/又は化学的性能パラメータは開示されていない。 化学製品の構造及び組成が一意に決定できるのであれば、その他の証拠における当該化学製品の物理的及び/又は化学的性能パラメータの測定結果を引用することは、開示された化学製品の物理的及び/又は化学的性能パラメータの確認にすぎず、新規性判断における単独比較の原則に違反するものではない。

14.専利文献が引用文献とする場合のそれに引用された先行文献(引証文献)の役割

【事件番号】1F554680 SDR 機能を有するユーザ機器

【判決の要点】専利文献の明細書に背景技術を反映した先行文献が引用されており、その引用された先行文献(引証文献)が専利審査基準の関連規定の要件を満たす場合、当該専利文献の明細書にはその引用された先行文献(引証文献)の関連内容が記録されているものとみなされる。当該専利文献が引用文献として使用される場合、その引用された先行文献(引証文献)の内容のうち、当該専利文献と密接に関連するものは、引用文献の開示内容とすることができ、当事者の合理的な期待を超えていない。

15. ヒューマン・コンピュータ・インタラクション分野における「背景特徴」が先行技術によって開示されているか否かの判断

【事件番号】4W117583 ユーザーインターフェース要素を操作するための装置、方法、およびコンピュータ可読記憶媒体

【判決の要点】ヒューマン・コンピュータ・インタラクション技術において、バックグラウンド処理はフロントエンドの入力操作と出力結果との間の橋渡しとして機能する。バックグラウンド処理に関連する技術的特徴は、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションのフロントエンド機能と併せて検討する必要がある。先行技術証拠においてバックグラウンド処理方法が明示的に記載されていない場合は、ソフトウェアのインタラクティブ操作の技術的特徴を考慮し、ユーザーの入力操作と得られた出力結果に基づいて、バックグラウンド処理方法が直接的かつ明確に特定できるかどうかを判断する必要がある。そして、この判断に基づいて、バックグラウンド処理方法が暗黙的に開示されているか否かを判断する。

16. 先行技術に開示された情報の文言通りの解釈の回避

【事件番号】 4W117756 光学材料用樹脂の製造方法

【判決の要点】先行技術を理解する際には、当業者の視点を考慮し、技術的に非論理的または無意味な情報を開示の一部として機械的に解釈することは避けるべきである。

17. ビデオ証拠に技術的内容が開示されたことの認定

【事件番号】 4W117730 電動カーテン及び電動カーテンレールのインテリジェント調整方法

【判決の要点】ビデオ証拠に開示された技術的内容は、主観的な推測や想像ではなく、ビデオから直接かつ明確に確認できる内容に基づくべきである。ビデオの再生時間が短い、撮影角度が正確でない、鮮明度が不十分である等により、製品の構造や操作手順といった技術的特徴がビデオから直接かつ明確に確認できない場合、当該ビデオ証拠に関連する技術情報が開示されていると判断するには不十分である。

18. PCT出願は「抵触出願」として用いられるか否かの認定

【事件番号】 1F609940 MPMリスト構築方法、クロマブロックイントラ予測モード取得方法及び装置

【判決の要点】PCT国際出願は、中国国内段階に移行した後、国家知識産権局に直接提出された特許出願と同様の法的効力を有する。その他の法定要件を満たしている場合、国内段階に移行した後のPCT国際出願は、新規性評価のため、「抵触出願」として用いられる。

19. 優先権判断における「引証文献」の役割

【事件番号】 4W117594「リン酸ルキソリチニブ」案

【判決の要点】特許出願の背景技術に引用された先行文献(引証文献)が特許審査基準の関連要件を満たしている場合、特許明細書にはその引用された先行文献(引証文献)の関連内容が含まれているとみなされる。優先権書類には、技術的効果を実証するために用いられた測定方法及び測定結果が直接記載されていないが、当業者が当該優先権書類及び引証文献の内容に基づいて、先願として当該優先権書類の技術分野、解決される技術的課題、技術的解決策、及び期待される技術的効果を理解することができ、かつ、当該優先権書類が後願と上記4つの点において同一である場合、両出願が同一主題の発明である限り、後願は先願の優先権を享受することができる。

20. 「新規性喪失の例外の猶予期間」を要求する条件

【事件番号】 5W135853 一体型ブラケット 浮体式防波堤ブラケット

【判決の要点】特許出願人または特許権者が出願日後に「他者が出願人の同意を得ずにその内容を開示した」ことを知り、新規性喪失の例外の猶予期間を主張する場合、以下の条件が必要となる。第一に、開示は出願日前6ヶ月以内に行われたこと。第二に、出願人または特許権者は、開示を知ってから2ヶ月以内に、裏付けとなる書類を添えて、新規性喪失の例外の猶予期間を要求する声明を国家知識産権局に提出すること。第三に、他者が開示行為を通じて開示した技術案は、出願人または発明者から直接または間接に派生したものであること。第四に、開示は出願人の同意を得ずに行われたこと。

21. モノクローナル抗体発明の新規性の判断

【事件番号】 4W116893 IL-17抗体におけるシステイン残基の選択的還元

【判決の要点】モノクローナル抗体発明の先行技術に対する改良点が特定のアミノ酸残基の選択的還元にあり、かつモノクローナル抗体の国際命名法によれば、配列中の個々のアミノ酸残基の酸化または還元形態は、一般的にその命名法に影響を与えず、更なる裏付け証拠がない場合、先行技術におけるモノクローナル抗体の命名法が本発明の命名法と同一であるという単なる事実だけでは、先行技術が本発明でクレームされたモノクローナル抗体製品を開示していると判断するには不十分である。さらに、先行技術にモノクローナル抗体の製造方法が開示されていないことにより、本発明に記載された製造方法と比較できず、関連する物理化学的パラメータが本発明のものと明らかに異なる場合、本発明クレームされたモノクローナル抗体が先行技術に対して新規性を欠くと判断するのはさらに不十分である。

V. 進歩性

(I) 区別される技術的特徴と発明が実際に解決しようとする課題の判断

22. 特定の機能を達成するために協働する複数の区別される技術的特徴は、別々検討するべきではない

【事件番号】 1F450934:プラスチックペレット処理システム及び処理技術

【判決の要点】区別される技術的特徴と発明が実際に解決しようとする課題を判断する際には、特定の機能及び効果を達成するために協働する複数の技術的特徴を、それぞれ個別的に検討するのではなく、全体として検討すべきである。本件出願と最も近い先行技術はいずれも機械加工の分野に係るものであるが、両加工対象が異なるため、それらの構成要素の構造、機能、及び相互接続のいずれにも相違があり、しかも、これらの相違が有機的に関連し、共同で特定の技術的効果を生み出している場合は、これらの区別される技術的特徴を別々検討し先行技術から技術的示唆を別々検索するべきではない。

23. 「適用シナリオ」が異なることが進歩性判断への影響

【事件番号】 4W111293 チャットボットシステム

【判決の要点】 請求項に記載の技術案が先行技術の適用シナリオと異なり、対応する構成要素の機能及び構成要素間の接続関係が先行技術に開示されていない場合、かつ、当該相違点により請求項に記載の技術案が有益な技術的効果を有する場合、当該請求項は進歩性を有する。

24. 公知技術は時間の経過とともに進化し変化する可能性がある

【事件番号】 1F483654 化粧品原料中の機能性成分の分析方法

【判決の要点】特定の技術分野における常識は、時間の経過とともに進化し変化する可能性がある。引用文献に黙示的に開示された技術的内容を公知証拠と結びつけて判断する際に、公知証拠の開示日が比較文書の作成日よりも遅い場合、簡単に公知証拠に開示された内容が引用文献に黙示的に開示された内容であると判断することはできない。

出所:IPRlearn

※本資料は康信が作成した仮訳となります。康信では情報・データ・解釈などをできる限り正確に記載するよう努力しておりますが、本資料で提供した情報などの正確性について康信が保証するものではないことを予めご了承の程宜しくお願いいたします。

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