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21 May 2025

最高人民法院 全国法院の知財事件における43の法律適用問題の年次報告書(2024年)の概要(一)

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Kangxin

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特許権侵害紛争事件において、特許評価報告書は事件の審理において証拠の一つとして用いることができるが、係る特許の有効性は、依然
China Intellectual Property

ーー特許と商標審判について

一、特許審判

1. 特許侵害紛争における特許評価報告書の特徴

【事件番号】

(2024年)最高法民再244号

【判決要旨】

特許権侵害紛争事件において、特許評価報告書は事件の審理において証拠の一つとして用いることができるが、係る特許の有効性は、依然として特許登録公報と行政部門の有効な決定に基づいて判断されるべきである。特許権者が有効な特許に基づいて侵害訴訟を提起した場合、特許評価報告書において当該特許が法定の登録条件を満たしていないとの否定的な結論が出されたという理由のみで、当該特許権者に訴訟権行使の根拠がないと結論づけて訴訟を却下することは認められない。

2. 関連事件における特許侵害判断の調整

【事件番号】

(2023年)最高法知民終740号

【判決要旨】

被疑侵害製品、特許権、及び理由が同じである非侵害抗弁について、関連する事件の判断は、裁判上の矛盾を防ぐために一貫性を保つべきである。仮に第一審判決後に被疑侵害者が控訴しなかった場合でも、第二審裁判所は、他の事件の有効な判決における同一の抗弁理由が成立したという認定に基づいて、被疑侵害者の関連抗弁も成立したと判断することができる。

3.履行条件付き判決および履行遅延期間中の債務利息

【事件番号】

(2024年)最高法知民終370号

【判決要旨】

1)特許無効審判手続きが、当該特許に対して財産保全措置が取られているため中断され、国家知識産権局が特許権侵害訴訟の判決前に無効審判請求について裁定を下すことができない場合には、人民法院は事件の具体的な状況に基づき、判決で定められた義務の履行について相応の措置を講じることができ、これには侵害の停止、損失の賠償など判決事項の履行に必要な条件を付することが含まれる。例えば、特許権者が訴訟を提起した特許請求の範囲について、国家知識産権局が審査し、その有効性を維持する決定を判決の履行の前提条件としたり、期間中の債務利息について取り決めをしたりして、当事者間の利益を合理的に均衡させることもできる。

2)履行条件が付された判決については、履行遅延期間の債務利息の支払も同時に命ずることができる。すなわち、判決の履行条件が満たされた後、効力発生判決の送達の日から履行条件が満たされる日までの期間について、全国銀行間資金調達センターが公表する同じ期間の貸出市場相場レートに基づいて利息を計算する(すなわち、単一利息)。判決で定められた履行条件が満たされた後もなお金銭支払義務を履行しないときは、履行遅延期間の債務利息を倍額加算する。

4.無効の審決が下された後の執行済みの特許侵害判決の取扱い

【事件番号】

(2024年)最高法知民再1号

【判決要旨】

1)特許権無効決定が下された後の執行行為は、特許法第47条第2項に規定される「無効宣告決定は既に発効した特許権侵害判決に遡及しない」という状況に該当しない。当該執行された金銭は、通常、執行法院が執行取消手続きにおいて、執行申立人に対し、取得した財産及び利息を執行対象者に返還するよう命じるべきものである。人民法院は状況に応じて再審判決において返還を命じることもできる。

2) 複数の被疑侵害者が関与する特許権侵害判決において、異なる被疑侵害者の賠償義務の執行時期が異なることにより、特許法第47条第2項を適用した結果が異なるようになり、公平の原則に違反した場合、人民法院は特許法第47条第3項の規定を適用して処理することができる。

5. ジェネリック医薬品申請者が特許情報登録前に行ったクラスI宣言の取扱い

【事件番号】

(2023年)最高法知民終1593号

【判決要旨】

販売承認取得者が所定の期間内に特許情報を正しく登録したが、ジェネリック医薬品の申請者が特許情報の登録前に既にクラスI宣言を行った場合、販売承認取得者はジェネリック医薬品の申請者に対し、合理的な期間内に宣言の種類の変更を速やかに申請するよう求める機会が与えられるべきである。ジェネリック医薬品の申請者が、そのクラスI宣言をクラスⅣ宣言に変更することを申請し、又は合理的期間内に変更申請を拒否し、若しくはその他の誤った宣言に変更することを申請した場合、人民法院は特許権者が提起した医薬品特許リンケージ訴訟を受理し、実体審査を行わなければならない。



6. 医薬品特許リンケージ紛争における医薬品の技術案が変更された場合の取り扱い

【事件番号】

(2023)京73民初855号

【判決要旨】

医薬品の特許リンケージ紛争事件において、人民法院は医薬品審査承認部門が医薬品の販売承認の可否を審査する際に用いる技術案を根拠として、医薬品が特許保護の範囲内であるか否かを判断するべきである。医薬品の販売承認申請者は、医薬品が特許保護の範囲内であるかどうかの判定に影響を及ぼす可能性のある技術案の変更について、適時且つ正直に人民法院に説明しなければならない。説明をしない場合は、法により不利な結果を受けるべきである。



7. 実用特許の発明者の特定

【事件番号】

(2022年)蘇05 民衆第925号

【判決要旨】

実用発明特許は、既知の化合物の新しい用途の発見に基づく発明創造である。その核心は、既知の化合物自体にあるのではなく、既知の化合物の新しい用途の発見と応用にある。 「古い薬の新しい用途」という発明概念の提案が研究開発活動において重要な役割を果たしている場合、発明概念を提案し、具体的な技術案の形成または実質的な改善、及び段階的な研究開発に実質的な貢献を果たした者は、発明者として記載することができる。

8. 使用環境特性の認定と侵害判断

【事件番号】

(2022)沪73知民初第223号

【判決要旨】

使用環境特性の認定は、関連する特許の発明の名称、発明の主題、特許請求の範囲における設備関係等の記載、明細書の内容に基づく総合的な判断に基づいて行うことができる。被疑侵害技術案が特許請求の範囲に係る使用環境特性を有するか否かを検討する場合、被疑侵害製品は使用環境特性に関係する必ずコンポーネントを有している必要はなく、被疑侵害製品が使用環境特性によって特定される使用環境で使用できればよい。

10.特許無効審判の口頭審理における請求項の削除補正の受理

【事件番号】

(2022年)最高法院知行終870号

【判決要旨】

特許無効審判の口頭審理において、国家知識産権局が修正された請求項の一部が受け入れられないと判断した場合、特許権者は現在の請求項の本文から受け入れられない請求項を削除し、残りの受け入れられる請求項を審査の基礎として使用することが認められるべきである。特許権者が法廷において口頭で削除を提案したか書面で提案したかにかかわらず、国家知識産権局は通常それを受け入れるべきである。差替ページが法廷で提出されない場合、国家知識産権局は一定期間内に追加提出するよう要求することができる。指定された期間内に差替ページが提出されない場合、特許権者が法律に基づいて請求項を修正していないものとみなされ、それに応じた処理が行われる。

11. 保護を求める意匠デザインが明確に示されているかについての認定

【事件番号】

(2024年)最高法院知行終672号

【判決要旨】

一般消費者の知識水準と認知能力に基づき、特許六面図、使用状態図及び一般常識を考慮しても、意匠図面に示されたデザインに対して依然として複数のデザインが考えられる場合、当該意匠の書類は保護を求める製品のデザインを明確に示していないと判断される。 



二、商標審判

12. 地理的表示証明商標権の侵害を判断する際に考慮すべき要素

【事件番号】

(2024年)最高法民再21号

【判決要旨】

侵害行為が地理的表示証明商標権の侵害になるかどうかを判断する際には、以下の要素を考慮する必要がある。1)被疑侵害商品が地理的表示商標を使用する条件を満たしているかどうか、つまり、商品が特定の原産地から来ているかどうか。2)被疑侵害商品が地理的表示産品の特定の品質を有しているかどうか。 3)被疑侵害行為が、商品の出所や具体的な品質に関して、関係する公衆に混乱や誤解を引き起こす可能性があるかどうか。

13. 商標の先使用抗弁の判断

【事件番号】

(2024年)最高法民再218号

【判決要旨】

商標の先使用抗弁権を行使する場合には、商標の先使用者の利益と登録商標の専用権者の利益との間のバランスが図られることが必要である。他人の登録商標と同一または類似の商標が同一または類似の商品に善意で使用され、一定の影響力を有する場合、先使用者は当初の範囲内で引き続き使用する権利を有する。先使用が商標出願日前であるが商標登録人の使用時点より後であり、先使用者が知っていたか、または知っているべきであったことを立証する証拠がある場合には、先使用の抗弁が成立すると認めることは適切ではない。

14. 景勝地名の合法的な使用の認定

【事件番号】

(2024年)最高法民再123号

【判決要旨】

標章が観光地の名称を言及するため、または観光地の関連する内容や特徴を描写・説明するためにのみ使用され、必要な限度を超えず、関係する公衆が一般的に注目し、日常生活の経験と結びつき、商品またはサービスの出所について混乱を招かない場合は、標章の合法的かつ合理的な使用であり、商標権侵害にならない。

15. 侵害による利益を証明証拠がある場合、損害額を決定する根拠としてその侵害による利益を優先にすべきである。

【事件番号】

(2023年)最高法民再178号

【判決要旨】

商標法第63条には、損害賠償額の算定方法の適用順序が規定されている。人民法院は、損害賠償額を確定する際には、権利者の実際の損失、侵害者の侵害による利益、合理的なライセンス料を優先して計算すべきである。法定損害賠償は、実際の損失、侵害による利益、ライセンス料を判断することが困難な場合にのみ適用される。

16. 小売サービスと「他人のために販売促進を行う」サービスは類似になるの判断

【事件番号】

(2022年)蘇民終356号

【判決要旨】

商品販売業者が最終消費者に提供する小売業サービスは、目的、内容、方法、対象において、第35類「他人のために販売促進を行う」サービスと非常に類似している。小売サービスを提供する過程において、第35類の「他人のために販売促進を行う」商標と同一の標章を無断で使用すると、サービスの出所に関して関係公衆に混乱を生じさせる可能性があり、商標権侵害になるとみなされるべきである。

17. 医薬品商標権侵害事件における標章貢献率の算定と懲罰的損害賠償の適用

【事件番号】

(2021年)蘇05 民初第437号

【判決要旨】

1)医薬品商標権侵害事件においては、医薬品分野のマクロ的な発展動向、消費者の医薬品購入におけるミクロ的な視点、特定の医薬品業界への参入障壁の違い、先発医薬品とジェネリック医薬品の技術的な差異、製薬会社自体の知名度などを総合的に考慮し、関連する標章が被疑侵害医薬品の利潤にどの程度貢献したかを合理的に判断すべきである。 

2)被疑侵害者は、権利者の株主であり、かつ、同業事業者として、株主関係の終了後、権利者の商標に類似する標章を同一商品に使用するために登録出願し、行政審判により商標が無効と判断された後も、被疑侵害行為を中止しなかった、また関連する医薬物は、高警戒又は紛らわしい薬物であり、その侵害行為が人体の健康を危険にさらす恐れがある場合、商標法に規定される「情状が重大な商標専用権の悪意による侵害」に該当し、法に基づいて懲罰的賠償が適用される可能性がある。

18. 商品外観による商標登録出願の識別性の判断

【事件番号】

(2024)最高人民法院行政申請第5449号

【判決要旨】

商品外観の形で出願された係争商標の出願人が、その商標の実際の使用を通じて、関係公衆は係争商標を商品の外観だけでなく商品の出所を識別するためのマークとして利用できるようになったことを証明する十分な証拠を提出しない場合、係争商標は識別性を有していないと判断される。

19.商標登録が他人の先行ドメイン名権への侵害有無の判断

【事件番号】

(2024年)最高法行再244号

【判決要旨】

係争商標の登録が他人の先行ドメイン名権を侵害していると判断するためには、当該ドメイン名が最初に登録され、一定の知名度を有していること、ドメイン名運営者が提供する商品またはサービスが係争商標の使用を認められている商品またはサービスと同一または類似していること、および係争商標がドメイン名と同一または類似しており、関係公衆に混乱や誤解を招く可能性が高いこと、という条件を同時に満たす必要がある。ドメイン名運営者が提供する商品やサービスにおける宣伝や使用の証拠は、一定の知名度があるかどうかを判断するための事実的根拠として使用することができる。

20. 商標法第44条における「その他の不正な手段による登録を取得」の適用

【事件番号】

(2024年)最高法行再88号

【判決要旨】

係争商標が商標法第44条第1項に規定する「その他不正の手段により登録を取得」する状況に該当するかどうかを判断する際に、商標出願人の商標出願件数が一定規模に達したという理由だけで、当該商標が「その他不正の手段により登録を取得」したと判断することは適切ではない。係争商標を使用する真意があり、又は実際に商標を商業的に使用していること、及び係争商標の出願が合理的かつ正当であることを証明できる場合、通常、係争商標が本条にいう状況に該当すると判断することは適切ではない。

21. 商標が3年不使用で取消された場合の使用商品の認定

【事件番号】

(2024年)最高法行再第51号

【判決要旨】

係争商標が実際に使用されている商品が「類似商品・役務区分表」における標準化商品名に該当しないが、商標の使用が承認された商品と実質的に同一の商品である場合、又は実際に使用されている商品が承認された商品の下位概念に属する場合、承認された商品の使用になると判断される。係争商標が登録された後に「類似商品・役務区分表」が変更されたとしても、上記の認定は影響されない。

22. ゲームライブストリーミングプラットフォームの行為が「他人のために販売促進を行う」サービスになるかどうかの判断

【事件番号】

(2024)京行終6099号

【判決要旨】

ゲームライブストリーミングプラットフォームは、独自のトラフィックとユーザーリソースを活用して、ゲームライブストリーミング、ゲームのダウンロードとフォーラムの提供、プロモーション活動の企画などを通じてゲームの宣伝とセールスを行い、パートナーゲームのダウンロードとリチャージ量を増加させ、ゲーム収益の一部を獲得する行為は、他人のために商品またはサービスの販売の企画・宣伝を行うことに該当し、「類似商品・役務区分表」第35類「他人のために販売促進を行う」サービスに該当すると判断される。

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