【裁判要旨】
特許権者が立証に尽力し、被疑侵害技術案が特許クレームの保護範囲になる可能性が高いことを十分に証明でき、かつ検証条件が整わない場合、被疑侵害者が反証を提出する能力があるにもかかわらず反証を提出しないときは、不利な結果を負担すべきである。
【キーワード】
民事 特許権侵害 技術案 検証条件 立証責任
【事件経緯】
江蘇省の某科技会社は、特許番号20061004****.4、名称「配管用耐高圧回転補償器」の発明特許(以下「係争特許」という)の特許権者である。2021年6月、江蘇某科技公司は、江蘇某管件公司が製造・販売し、盤錦某熱力公司が使用する回転補償器(以下「被疑侵害製品」という)が係争特許権を侵害しているとして訴訟を提起し、江蘇某管件公司及び盤錦某熱力公司に対し、侵害行為の停止及び損害賠償を命じる判決を求めた。被疑侵害製品は既に大規模配管網に設置されており、現場検証が不可能な状況であったため、江蘇某科技公司は江蘇某管件公司のウェブサイトに掲載された電子カタログに示された同一シリーズ製品の構造図を対比の根拠とすることを主張した。
一審法院は、江蘇某科技公司が被疑侵害製品に実施された技術案が江蘇某管件公司の電子カタログに展示された製品構造図と一致することを証明する証拠がなく、立証責任を江蘇某管件公司に移転させるには不十分であるとして、一審民事判決で江蘇某科技公司の訴訟請求を棄却した。江蘇某科技公司は不服として控訴した。最高人民法院は2024年6月21日、(2022)最高法知民終1316号民事判決を下した。即ち、一審判決を取消し、江蘇某管件公司に対し、係争特許権を侵害する製品の製造、販売、販売の申出行為を停止させるとともに、経済的損失及び権利を保護するための合理的な支出103万元を賠償するよう命じた。
【裁判意見】
法院は発効判決で次のように判示した。当事者は自らの主張について証拠を提出して証明すべきであると認めた。案件の審理状況に基づき、人民法院は当事者の主張及び立証すべき事実、当事者の証拠保有状況、立証能力等に応じて、当事者に関連証拠の提出を求めることができる。人民法院が法に基づき当事者に関連証拠の提出を要求した場合、当事者は正当な理由なく提出を拒否し、虚偽の証拠を提出し、証拠を毀滅し、またはその他の証拠を使用不能にする行為を行ったときは、人民法院は相手方当事者が当該証拠の関連証明事項に関わる主張が成立すると推定することができる。
江蘇某管件公司が自社ウェブサイトで公開した電子カタログに掲載された製品構造図のシリーズ番号は、被疑侵害製品と同一であり、被疑侵害製品に実施された技術案が、電子カタログに示された同一シリーズ製品構造図と一致する可能性は極めて高く、江蘇某科技公司は既に初歩的な立証義務を履行したため、立証責任は江蘇某管件公司に移転すべきである。法院の説明によると、江蘇某管件公司は被疑侵害製品の技術契約等の資料を提出できず、提出した図面は原本媒体がないため客観的真実性を確認できず、従って同社が主張する「被疑侵害技術案は電子カタログの同一シリーズ製品構造図と異なる」という主張は証拠に裏付けられていない。江蘇某管件公司が十分な反証を提出できなかった状況下では、各当事者の証拠保有状況、立証能力等の要素に基づき、江蘇某管件公司が立証不能の不利な結果を負担すべきであり、係争中の侵害製品が実施する技術案は江蘇某管件公司の電子カタログに示された同一シリーズ番号製品の構造図に示された技術案と一致すると推定される。比較・対比の結果、被疑侵害技術案は係争特許権の保護範囲内になるため、江蘇某管件公司は侵害行為の停止及び損害賠償の民事侵害責任を負うべきである。
【関連法律】
『中華人民共和国特許法』第11条第1項(本件に適用されるのは2009年10月1日に施行された『中華人民共和国特許法』第11条第1項である)
出所:最高人民法院知的財産法廷
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