商標権者にとって、税関での水際取締措置を利用することは、商標権侵害となる模倣品の輸出入を防ぐための最も簡易で費用対効果の高い方法の一つであろう。

現行の台湾の法規により、商標権者は自分の商標を保護対象として登録するよう税関に申し立てることができ、登録完了後、税関はその登録内容に照らして輸出入の貨物に対し検査を行うことになる。なお、被疑貨物が発見された場合、商標権者又はその代理人は税関の通知を受けた後の24時間以内(航空輸送による輸出品の場合は4時間以内)に貨物への鑑定を行うかどうかを税関に回答し、且つ税関に赴きその被疑貨物を視認しなければならない他、その後3営業日以内に、その貨物が模倣品であるかどうか、及びその判定理由に関する報告書を税関に提出しなければならない。さもなければ、その貨物は無条件に解放されることとなる。このような時間的制限は、外国における商標権者(とりわけ営業所が台湾に所在しない企業)にとって、非常に大きな負担を課すものになっている。

そうした中、現在のネット技術を駆使して水際取締措置の利便性と透明性を向上させるために、台湾の税関当局は、2021年6月9日に、「税関における商標権益の保護措置の執行に関する実施規則」(中国語名:海関執行商標権益保護措施実施辦法。以下、「実施規則」と称する)の改正草案を公表した。

この改正草案では、商標権者の負担を軽減させるために、商標権者又はその代理人が自ら税関に赴き被疑貨物を視認すること以外の選択肢を提供している。当改正草案第7条第2項及び第5項によると、税関は新たなオンラインプラットフォーム(中国語名:海関核可平台)を導入する予定であり、商標権者が被疑貨物を視認するための情報(例えば画像ファイル)を直ちに入手することができるようになる。すなわち、商標権者は税関から被疑貨物が発見されたとの通知を受けたら、すぐに上記のオンラインプラットフォームから税関が模倣品取締時に撮影した被疑貨物の画像ファイルを入手することができ、商標権者又はその代理人が通知を受けてから24時間以内に自ら税関に赴かなければならないというプレッシャーがなくなる。

そして、オンラインプラットフォームから画像ファイルを入手した後、商標権者は下記の事項を行うことができる。

一、 所定時間内(被疑貨物が航空輸送による輸出品の場合は4時間以内、航空輸送による輸入品及び海上輸送による輸出入品の場合は24時間以内)に税関に赴き、又はオンラインプラットフォームにアクセスすることにより、商標権侵害の有無の判定をすべきか否かを確認する。

二、 オンラインプラットフォームより入手した画像ファイルによる視認、又は現場立会による視認の結果、被疑貨物が模倣品と判定された場合、被疑貨物の押収や後続の対応措置をさせるために、商標権者は3営業日以内に侵害鑑定報告書を税関に提出し、又はそれをオンラインプラットフォームにアップロードする。また、商標権者は、上記の時間的制限を更に3営業日延長するよう申し立てることができる。

一方、 被疑貨物の輸出入者は3営業日以内に非侵害を証明するための関連書類を税関に提出し、又はオンラインプラットフォームにアップロードしなければならない(この時間制限も更に3営業日延長するよう申し立てることができる)。さもなければ、貨物は正式に税関に押収されるのみならず、その事件と押収された貨物も司法当局に送られることとなる。

この新たなオンラインプラットフォームにより、税関における水際取締措置の利便性と透明性の向上が予想される。

留意すべき点としては、改正草案の第7条第5項によると、被疑貨物が商標権を侵害したかどうかを判定する際、商標権者は、オンラインプラットフォームにアップロードされた被疑貨物の画像ファイルを参考にすることができるが、それを唯一の判定根拠にしてはならないということである。

最後に、今回の改正に照らし、今後、商標権者は下記の事項に注意を払わなければならないと思われる。

一、 商標権侵害の存否を判定する際、入手可能な情報全般を評価し、全体的な状況に基づいて総合的な分析を行わければならない。

二、 事件が司法当局に送られた場合、その貨物の真贋に疑義があるのであれば、商標権者が指定する者(例えば商標権者が法人である場合、真贋判定を担当する従業員)が司法手続において証言する必要が生じかねず、被疑貨物が何故(又はどのように)模倣品と判定されたかについて法廷で交互尋問を受ける可能性さえある。

税関当局は現在、実施規則の改正草案に対する公衆の意見を募集しており、今後、改正草案がもたらす利便性をさらに向上させる調整が行われるか否かは、さらなる観察を要する。

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