上海知識産権法院(知財裁判所)はこのほど、香港企業によるEU商標の悪用が大陸部企業に損害を与えた不正競争訴訟の二審判決を言い渡し、被告側に計50万元(1元は約20.3円)の賠償を命じる原判決を支持した。本件は「域外商標の悪意ある登録を中国不正競争防止法で規制した初の典型的事例」として注目を集めている。
原告の某器科技公司(2016年設立)は、防塵マスクに「図形+DOC」商標を使用し、欧州を中心に販売実績を積み重ねてきた。しかし2020年、取引関係にあった蒋某が香港で会社を設立し、EUにおいて「DOC+Care」商標を出願。2021年には第10類(医療用防護マスク等)での登録を取得した。その後、被告は2021年からアリババ国際サイトへの苦情申立てやドイツ販売代理店への警告状送付を繰り返し、原告企業の輸出業務に重大な支障を引き起こした。
裁判所は審理を通じ、被告が取引過程で原告商標の先行使用を認識していた事実を認定。さらに、EU商標登録行為そのものが中国・EU双方の法制度下で「悪意ある先取り登録」に該当すると判断した。裁判所は、知的財産権の属地主義を認めつつも、大陸部企業を狙った権利濫用行為については国内法の適用が可能であるとし、反不正競争法第2条(誠実信用原則)に違反していると結論付けた。
本判決は、国境を越えた商標の不正登録行為に対する法的責任を明確化した重要な判例である。二審の担当裁判長は、「国内企業は国際的な商標戦略を強化し、特に販売チャネルにおける商標権の帰属を明確化すべきだ」と呼びかけている。さらに、「販売業者や第三者は、域外登録によって国内法の規制を回避する行為を慎み、知的財産権の濫用を戒めるべきである」と警鐘を鳴らした。
出所:中国知識産権資訊網
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