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4 October 2021

特許関連実務における「公知常識」の考え方(一)

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Kangxin

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特許授権・権利確定において、技術案の区別技術的特徴が当業界の公知常識であるか否かについての判断は、争点となったことが多い。
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特許授権・権利確定において、技術案の区別技術的特徴が当業界の公知常識であるか否かについての判断は、争点となったことが多い。

出願人に非合理的な損失をもたらさないために、通常、「主張する一方より挙証責任を負う」規則により挙証を行う。但し、その挙証の過程において、主張する一方が主観的な論理付けをすることがあるので、客観的で有効な判断結果を得られない恐れがある。

本稿で、特許授権・権利確定の手続きで「公知常識である」と主張された技術的特徴に対する抗弁理由を与えるために、実務と理論的な分析を結び付て、出願書類作成及び審査意見に応答する際の「公知常識である」と指摘された区別技術的特徴の処理戦略を紹介する。

一、目的

1.各国が規定の「公知常識」の定義

各分野の技術イノベーションを推進するために、多くの国は知的財産権出願審査の品質と効率を非常に重視し、関連法律法規の改善に注力している。なお、特許授権・権利確定において、最も重要な一つの判断基準は、出願書類における保護を求めようとする技術案が法定の進歩性判断要件を具備することである。

一方、進歩性評価において、区別技術的特徴が公知常識であるか否かの認定について、発明創造が進歩性を有しているか否かを判断する重要なステップである。実は、各国の公知常識についての認定は多くの類似点がある。具体的には、下記のように説明する。

米国特許審査指南[1]の規定により、公知常識として使用できるものは次の2点の内容がある。

(1)よく知られている(well known)とすぐに疑いなく証明できる事実、又は証明しやすい、且つ矛盾している記録がない事実。

(2)公知常識を証明するための文献証拠、誓約書又は宣言。即ち、米国特許審査実務において、「公知常識」とは、よく知られているとすぐに疑いなく証明できる事実、又は証明しやすい、且つ矛盾している記録がない事実[2]を指す。

日本「特許実用新案審査基準」[3]の規定により、技術常識とは、当業者が普通に知っている技術(公知技術、慣用技術を含む)、又は経験や法則により容易に得られる事項を指す。その中の「技術常識」は当業者が普通に知っているもの(実験、分析製造方法等も含む)である。また、「公知技術」は当業界で既に知られている技術、又は列挙の必要もない熟知されている技術[4]である。

欧州特許庁「審査指南」[5]の規定により、「公知常識」とは、基本的なマニュアル、モノグラフ又は教科書における前記テーマに関わる情報を指す。中国現行の「専利審査指南」(2010年)[6](以下、「指南」(2010)と略称する)の第2部分第4章に、「前記区別技術的特徴が公知常識である。例えば、当業界で当該改めて確定された技術課題を解決する慣用技術手段、若しくは教科書又は参考書などに開示された当該改めて確定された技術課題を解決する技術手段。」と規定されている。

総じて言えば、各国の「公知常識」の根本的な特徴は「普遍性」である。即ち、「公知常識」を認定する際に、当該特徴の「普遍性」を重点的に考慮した上、実際の状況に応じて適切な釈明方法を選択してその「普遍性」を証明する必要がある[7]。

しかしながら、「普遍性」について、通常、量化した判断基準を確定することが難しいため、判断する難度が高い。したがって、「公知常識」の特徴を理解した上で、出願書類作成及び審査意見応答で合理的な対応策を講じる必要がある。

2.特許出願審査過程での認定

出願人が特許出願書類を特許庁に提出した後、実体審査、再審、無効審判などを受ける可能性がある。

上記いずれの段階においても、出願人は、権利化されるために、出願書類の進歩性について公的機関の担当者(審査官、合議体、裁判官など)と交流する、又は補正する必要がある。

その中、行政権利確定・授権の手続きにおいて、公知常識は、進歩性を論証するための一つの重要な特徴である。また、公知常識が審査官などによる主観的な認知範疇になるため、審査官又は合議体は自発的に審査に公知常識を引用することができる。但し、公知常識が司法部門の認知範疇にならなく、また裁判官が一般的に当業者の専門知識を有しないので、当事者に十分な意見陳述機会を与えていない場合、裁判官は直接公知技術であると認定することができない[8]。

よって、上記のような審査手続きにおいて、特許出願人又は代理人は、公知常識であると指摘された区別技術的特徴について、合理的で有効な考え方により対応する必要がある。

二、審査官の考え方

覃韦斯氏が執筆した「公知常識の認定:命題の誤読及び明確化」[9]には、「『公知常識』の認定は、先行技術と引用文献とは異なる。公知常識は先行技術のサブセットとして、先行技術の意味を細分化した。即ち、長期間の研究、生産、使用又は生活での積重ねにより形成し、広く認可されており、自明的である先行技術のみを含む。」と記載されている。よって、公知技術として、直接に得られない、争点となっている、且つ広く認可されていない先行技術を排除すべきである。

現在、大部分の審査意見では、通常、先ず引用文献に基づいて一部の客観的な対比を行うことにより区別技術的特徴を確定し、そして、当該区別技術的特徴に基づいて結論を導き出すというような評価方法が使用されている。なお、区別技術的特徴に基づいて結論を導き出すことは、一般的に、次の二つの考え方により行われる。(1)当該区別技術的特徴自身は純粋な公知常識である。例えば、公理、定理などに対する長期間の検証による結論(2) 「当業者」が既存の引用文献に開示された内容に基づいて容易に想到できるため、当該区別技術的特徴は当業界の慣用設計/慣用技術手段である。

いずれの考え方であっても、審査意見で直接結論を出すが、実質上、その認定した「公知常識」が公衆によく知られている依拠を論証することはしない。言い換えれば、実務上、「公知常識」は依然として「主観的に認定される」ことは多い。

下記、具体的な事例で説明する。

本件出願には、複数の接続端子が配置されたハブボードと、複数の接続端子の第1端子と第2端子との間に接続されたケーブルと、一端が第1端子又は第2端子に接続され、もう一端が接地されている放電ボールとを含むケーブル故障シミュレータが開示されている。具体的に言うと、本件出願は請求項3以降の請求項に、「複数の接続端子は複数組に分けられ、各組には一つの前記第1端子と一つの前記第2端子が含まれ、各組の前記第1端子と前記第2端子の間に接続されたケーブルの長さは複数の長さグレードに分けられている」が記載されている。

本件の1回目の審査意見には、引用文献1(CN101699540A)が引用され、上記請求項3について次のように評価された。「請求項3は特許法第22条第3項に規定の進歩性を有していない。その理由は、当該請求項が請求項1に対する更なる限定であり、当業者は、一つのシミュレーションシステムで、長さの異なる複数のケーブル障害を同時にシミュレートするために、複数組の着信端と発信端を設定し、着信端と発信端の間のケーブルの長さを複数のグレードに分けることを容易に想到できる。」

上記のように、審査意見に、「当業者」がある目的を実現するために、「......を容易に想到できる」というような表現が使われており、公衆に「よく知られている」如何なる理由も挙げられていないため、明らかに主観的な認定になっている。

区別技術的特徴が「公知常識」であると認定する場合、その依拠又は論理を明確に述べる、特にその「普遍性」が成り立てる依拠を説明する必要がある。審査官は、公衆がよく知られている内容から十分な理由を説明して、出願書類に記載の技術案の所属分野、解決しようとする技術課題及び達成しようとする技術示唆を評価し、これら三つの実質的な要素が認定しようとする区別技術的特徴への影響を説明し、公知常識を認定する考え方を構築することにより、当該出願が進歩性を有していない結論を論証すべきである。即ち、「普遍的に知られている」証拠により「技術分野-技術課題-技術示唆」の認定基準を構築する。その中、重要な認定前提とする「普遍的に知られている」証拠について、審査官は単なる論理付けだけではなく、客観的に対比できる基礎文献を提出する必要がある。

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