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5 September 2023

「馳名商標」を認定する主要な要素は登録日ではなく使用開始の時期である

K
Kangxin

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実務上、企業が育成した名ブランドは他者ブランドただ乗りされて他の分野で同じまたは類似の商標を登録または使用されることはよくあ
China Intellectual Property

 実務上、企業が育成した名ブランドは他者ブランドただ乗りされて他の分野で同じまたは類似の商標を登録または使用されることはよくある。このような場合、相手のただ乗り行為(商標の抜駆け登録又は使用)を差し止めるために、通常、馳名商標の保護を主張する必要がある。

 但し、馳名商標の保護を主張しようとする商標の登録日が、他人が抜駆け登録した「ただ乗り」商標の出願日または使用日よりわずか数日または1~2ヶ月早い場合には、馳名商標保護の主張が認められるか。これについて、本稿で事例を以って検討する。

 外国企業は中国市場に進出する前に、事前に商標の登録出願を実施し、中国市場に進出する計画が決まったら、自社の商標保護体系の構築に着手し、中国で自社の商標について宣伝とプロモーションを頻繁に行ったほうが良い。

 海外の購買代行や越境ECが大人気な時期、海外の有名ブランドが中国市場への進出を計画する前に宣伝を行うと同時に、一部のセルフメディアやブロガーがこれらのブランドについても宣伝を行う。その際に、情報格差を利用して、外国ブランドを中国で商標登録する人もいるだろう。なぜなら、当時は外国ブランド自体が中国に進出し始めたばかりで、商標登録も遅れていたため、自社の商標出願後、ごく短期間に相手方が他の区分でより類似した商標を出願した場合、登録段階で相手方の商標を打撃することは困難である。一方で、情報の発達により、このブランドは中国市場に参入したばかりにもかかわらず、既に中国で非常に高い知名度を得ている可能性が高いと思われる。この場合、商標登録期間が短いとしても、馳名商標の認定を申請し、区分を超えた保護を得ることができる。

 (2019)粤73民終5764号二審民事判決書において、法院は「商標の知名度は登録ではなく、使用によって決まる。したがって、権利者の商標登録期間が短いから知名度がないという大明公司の主張は明らかに認められない」という意見を述べた。

 (2006 )沪高民三(知)終字第 32 号商標権侵害・不正競争訴訟において、原告のスターバックス社の第 1367394 号「星巴克」商標は 2000 年 2 月 21 日に登録され、被告の上海星巴克咖啡館有限公司は、2000年3月9日に設立され、原告の「星巴克」商標の登録日は上海星巴克咖啡館有限公司の設立日よりわずか16日早かった。

 法院は、下記のように意見を述べた。「原告の興源会社は中国本土市場に参入して以来、フランチャイズ方式で経営発展し、スターバックスコーヒーショップチェーンの規模は急速に拡大し、売上実績も年々大幅に増加するなど好調な傾向を示している。原告は、STABUCKS商標及び星巴克商標について、長期間にわたって大規模な宣伝活動を行い、多額の資金を投入した。STBUCKSシリーズの商標は国際的に広く知られており、原告による中国語圏における星巴克商標の宣伝と使用により、STABUCKSと星巴克商標の知名度は急速に拡大し、中国大陸の関係者によく知られるようになった。」

 したがって、スターバックスは、本件登録商標の専用権を取得する前に既に当該商標を広く使用しており、中国大陸において比較的高い知名度を獲得し、馳名の程度に達していること、また被告の上海星巴克咖啡館有限公司の主観的な悪意を考慮し、その行為は侵害になると判断した。

 つまり、先行判例によると、商標はその登録によってではなく、その使用によってよく知られているようになることである。

 筆者は最近、同様の訴訟を担当したことがある。その訴訟では、原告は宝格麗咖啡館を経営し、複数の「宝格麗」(ブルガリ社の中文表記と同じ)商標または類似する商標を登録しており、ブルガリ社の複数の商標に対して無効審判を請求した。この原告は、ブルガリ社の権利行使の長期的な対象の一つである。

 本件係争商標は、原告が第30類に登録した商標第5480348号「宝格麗音楽咖啡;BVLGARI MUSIC COFFEE」である。

 ブルガリ社は上記商標に対して商標無効を請求し、国家知識産権局に支持された。原告はこれを不服として行政訴訟を提起した。行政訴訟において、原告は、「ブルガリ社の引用商標の登録日は2005年12月28日であり、係争商標の出願日は2006年7月14日であり、係争商標が出願されたとき、引用商標はまだ登録して半年しか経っていないので、馳名の程度に達していなかった」こと、及び「係争商標を出願・使用することは悪意がない」ことを主張した。審理を行った結果、北京知識産権法院はその訴訟請求を却下するという判決を下した。

 本件において法院は、争点が「係争商標が2001年商標法第13条第2項に規定することに該当するか否か」ということにあると判断した。

 最終に、法院は下記のように判断した。「本件訴訟の証拠によれば、係争商標の出願日前に、引用商標が第三者の宣伝・使用により、比較的高い知名度を得ており、関連公衆に広く知られていたことが証明できる。係争商標と引用商標は、文字構成や読み方の点で比較的類似しており、引用商標のコピーまたは模倣にあたる...... また、原告は、本件係争商標以外にも、第30類及び第43類の商品又は役務について、「宝格麗」、「宝格麗咖啡BALCARY COFFEE」、「Bvlgari」等の複数の商標の登録出願を行った。その行為は「正当」とは到底言えない。これに基づいて、蔡慶賀氏による係争商標の登録出願は悪意があったと判断できる。したがって、ブルガリ社は2001 年の商標法第 13 条第 2 項に基づいて係争商標に対して無効審判を請求した場合、5 年の期限に制限されるべきではない。総じて言えば、係争商標の登録は、2001 年商標法第 13 条第 2 項に規定される状況に該当する。」

 本件訴訟において、弊所弁護士は、係争商標の出願日前にブルガリ社の商標が既に馳名になっていたことを証明するために、ブルガリ社の大量の使用証拠を補足で提出した。原告は、「引用商標の登録日は2005年12月28日であり、係争商標の出願日は2006年7月14日であり、係争商標は出願されたとき、引用商標は登録されてからわずか半年しか経っていなかったため、馳名の程度に達していなかった。」と主張した。当方は、馳名商標が登録ではなく使用によって馳名になることを証明した。具体的には、引用商標が係争商標の出願日前に既に比較的高い知名度を得ていたことと原告の悪意を証明した。法院は最終的に当方の主張を支持し、引用商標が馳名であると認定し、原告の訴訟請求を却下した。

 また、商標法第 14 条により、馳名商標は、当事者の請求により、商標に係る案件の処理において認定が必要な事実として認定を行わなければならない。馳名商標の認定には、以下の要素を考慮しなければならない。

(一)関連公衆の当該商標に対する認知度。

(二)当該商標の持続的な使用期間。

(三)当該商標のあらゆる宣伝業務の持続期間、程度及び地理的範囲。

(四)当該商標の馳名商標としての保護記録。

(五)当該商標が馳名であることのその他の要因。

 総じて言えば、馳名商標を認定する際に、商標登録日よりその商標の使用、宣伝、及びプロモーションのほうに注目すべきである。馳名商標は、登録によってではなく、使用によって馳名になる。したがって、登録されてから長く経ていないとしても、使用の証拠が十分であれば、馳名商標保護を主張することができる。上記の状況を考え、中国市場への参入を計画している企業は、中国において自社の商標を積極的に広範に宣伝およびプロモーションしたほうが良い。このようにすれば、中国市場に参入した後により高い市場シェアを獲得することに役立つだけでなく、商標知名度の向上やブランドの権利確認と権利保護の基礎を築くことにも有益である。

 したがって、だいぶ先に抜駆け登録された不法商標について、その抜駆け登録者が一定の市場規模を形成していたとしても、自社のブランドを保護し、希釈化や混同を防ぐために、権利者は積極的な行動をとる必要がある。通常、このような事件で直面する困難は、抜駆け登録された商標の出願日から長期間が経過しているため、多くの証拠を入手することが難しいことにある。よって、商標権者は、定期的に使用の証拠を意識的に保存したほうが良いと思われる。

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.

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