——(2019)最高法知民終804号

裁判要旨

先行技術抗弁の認定において、被疑侵害技術案の何れか一つの技術的特徴と先行技術案の対応する技術的特徴とが直接置換できる慣用手段である場合、当該二つの技術的特徴が実質的な相違がないと認定することができる。

キーワード

実用新案権、侵害、 先行技術抗弁、実質的な相違がない、慣用手段、直接置換

案件経緯

上訴人の佛山市順德区華申電器製造有限公司(以下、華申公司)、佛山市易豆科技有限公司(以下、易豆公司)と、被上訴人の浙江小智電器科技有限公司(以下、小智公司)との実用新案権侵害紛争において、対象実用新案(以下、本件実案)の権利番号がZL201320602436.9、名称が「醸造設備及びその醸造物容器の昇降構造」である。

小智公司は、「華申公司、易豆公司が権利者の許可を得ずに、本件実案の保護範囲内の製品(以下、イ号製品)の製造、販売及び販売の申し出を行ったため、自社の権利を侵害した」という理由で、広州知識産権法院(以下、一審法院)に提訴し、「華申公司、易豆公司が侵害を停止し、当社に経済損失及び権利行使のための合理的な支出を合計150万支払う」ことを請求した。

一審法院は、「イ号製品が小智公司の実用新案権の保護範囲内であり、華申公司が侵害を停止し、小智公司に25万元を支払い、易豆公司が侵害を停止し、イ号製品の在庫を廃却し、小智公司に1.5万元を支払う。」という判決を下した。華申公司と易豆公司が不服として、最高人民法院に上訴し、イ号製品の技術案が先行技術であり、自社のイ号製品の製造、販売及び販売の申し出を行った行為が本件実案を侵害していないことを証明するために、先行技術証拠であるUS1984047A特許文献及びその訳文(以下、047A特許)を提出した。

最高人民法院は2020年11月12日に、原審判決を取り消し、小智公司の訴訟請求を却下するという判決を下した。

裁判意見

二審において、小智公司が047A特許の真実性に対して異議がなかった。最高人民法院は、当該特許出願の公開日が1934年12月11日であり、本件実案の出願日より早いため、047A特許を先行技術抗弁の証拠として使用することができると認定した。

本件実案の請求項に開示されているクリップアセンブリに関わる技術的特徴は、「クリップアセンブリの一端は蓋体に固定され、他端は半径方向に沿って昇降シャフトに弾性的に押し付けられている」ことである。

上記クリップアセンブリは、主にばねとビー玉で構成されており、バネの一端は蓋体に押し付けられ、もう一端はビー玉と接続ブロックを介してリフトシャフトに突っ張るように支え、構造全体が蓋体内に配置されている。

上記の技術的特徴に対応する技術的特徴として、047A特許の明細書及び図面1には、「板ばね29は、中空部分25に設けられ、主軸26の溝28と協働する小さな突起30を有し、また中空部分25は、蓋5およびその延長部6の中に配置されている」ことが明確に開示されている。

イ号製品の技術案のばね、ビー玉式クリップ構造と、先行技術の板ばね、突起式クリップ構造とは、直接置換できる慣用手段であり、当業者が需要に応じて弾性部品及びその対応する構造を選択することができる。即ち、実質的な相違がない状況に該当する。

本件実案の保護範囲内であるイ号製品の技術案の全ての技術的特徴は、047A特許の技術案の対応する技術的特徴と全て同じ、又は実質的な相違がないため、華申公司と易豆公司の先行技術抗弁が成り立つ。

出所:最高人民法院知的財産権法廷

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