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15 April 2021

日本の特許実務での「特許請求の範囲の記載要件」の取扱 登録無効審判・知財高裁の「記載要件」での攻防

KP
Kimura & Partners

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Kimura & Partners
当所顧客である中国のある中小企業は日本で...
Japan Intellectual Property

当所顧客である中国のある中小企業は日本で 実用新案登録を保有していたが、日本の大企業に対して特許害警告を行い、これに対し大企業側は当該実用新案登録に対し無効審判を請求した。無効理由は「請求範囲の記載要件違反」(実用新案法5条6項1号等)である。

大企業側の具体的な無効請求理由は、「請求範囲には構成のみが記載されており、どのようにすれば機能、作用、効果が奏せられるかが不明であり、記載が明確ではないので違法である」というものである。

私は、 被請求人(中小企業)側での代理人であったが、この事件は特許庁の無効審判での争いの後、審判請求却下の審決が出(被請求人の勝ち)、大企業側が知財高裁へ出訴して争い、その後、最高裁に上訴し、最高裁において訴が却下されて、最終的な結論が出て、被請求人である中小企業側の勝訴が確定した。

具体的には、本件実用新案登録は、フィットネス器具であって、「使用者の身体に微細な振動を与える振動機」であるが、実用新案登録の請求範囲には振動機の構成要素のみが記載され、その構成要素がどのように相互に協働してどのような振動を発生させるか、は記載されていなかった。

しかしながら、明細書にはその点に関する詳細な記載があった。従って、明細書を参照することにより請求の範囲に記載された各構成要件の関係性は当業者であれば理解はできる。

この点は、特許庁の「特許審査基準」及び過去の裁判所での判決にも「明細書及び技術常識を参照した場合に、明確に理解できるか否か、を明確性要件の判断基準にする」旨が記載されており、当方の主張はこれに基づいて展開し、特許庁、裁判所において主張は容認された。

従って、本事件においては文法通りの反論で勝訴できたものであるが、最高裁判決まで多くの時間と多額の費用を要していることを考慮すれば、特許実務家としては、「請求範囲」に機能を記載してさえおけば、このような無効主張そのものを封じることができたものと考えられる。中小企業保護の観点からも、出願時における請求範囲の記載の重要性が認識できる。

以上

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