最近、最高裁判所は青島雷神科技股份有限公司(以下「雷神社」という)と国家知識産権局、肖氏との間の商標取消審判行政訴訟事件の再審判決において、原審および控訴審判決を取り消し、国家知識産権局に新たな決定を下すよう命じた。これにより雷神社が最終的に勝訴し、その「雷神」商標を維持することができた。本事件において、最高裁判所は「類似商品・役務区分表」における商品の上位概念・下位概念の認定基準を詳細に解釈し、特定の条件下では「下位概念商品の実際の使用は、上位概念の指定商品に対する使用とみなされる」という規則を明確に示した。この事件の概要は下記の通りである。
事件概要
雷神社は2020年11月20日、第9850669号「雷神」商標(以下「係争商標」という)を第三者から譲り受けた。この商標は第9類「電子信号送信機、アンテナ、相互通信装置、信号の電気的遠隔制御装置、遠隔制御装置、データ処理装置、ネット通信装置」等の商品で登録されている。
商標譲渡完了から1か月後、肖氏が連続三年間不使用を理由に国家知識産権局へ不使用取消審判を請求した。国家知識産権局は審査した結果、雷神社の「ノートブック型コンピュータ、家庭用コンピュータ本体、ルーター」等の商品における使用は、指定商品「相互通信装置、ネット通信装置」に対する使用と見なせると判断し、これらの商品における登録を維持し、「遠隔制御装置」商品における登録を取り消すと決定した。
肖氏がこの決定に不服し、北京知識産権法院に提訴した。北京知識産権法院は雷神社の提出した使用証拠が指定商品での真実な使用を証明するには不十分だと判断し、原決定取消を判決した。雷神社が控訴したが、北京市高級人民法院も原判決を維持したため、雷神社は最高裁判所に再審を請求した。
最高裁判所の見解
係争商標の「ノートブック型コンピュータ」「家庭用コンピュータ本体」「マウス」商品における使用が、指定商品「データ処理装置」に対する使用に該当するかについて、最高裁判所は以下の見解を示した。
「類似商品・役務区分表」は商品またはサービスの概念を明確に定義しておらず、同一類似群内の商品またはサービスが必ずしも明確に区別されているわけではなく、相互に交差または包含関係が存在し得る。一般に、同一類似群内に上位概念商品と下位概念商品が共存する場合、係争商標が上位概念商品のみで登録されており、下位概念商品で登録されていない状態で、権利者が下位概念商品において実際に商標を使用した場合、通常は登録済みの上位概念商品における使用と見做し得る。上下位概念の認定は、関連公衆の認知水準と市場実態に基づき、商品の機能・用途等から判断される。
本事件において、
第一に、「データ処理装置」と「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」は全て「類似商品・役務区分表」0901類似群コードに属する規範商品である。両者は包含関係にあり、上位概念と下位概念の関係にある。一般に「データ処理装置」とは、データの収集・保存・加工・分析・伝送等の処理機能を有する装置を指す。「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」は前記のデータ処理機能を備えており、「データ処理装置」の下位概念に属する。
第二に、係争商標は「データ処理装置」等の上位概念商品で登録されているが、「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」等の下位概念商品で登録されていない。本事件の係争商標は、雷神社より出願したものではなく、第三者が「電子信号送信機、アンテナ、相互通信装置、信号の電気的遠隔制御装置、遠隔制御装置、データ処理装置、ネット通信装置」商品で出願したものである。雷神社は、指定期間末期に係争商標の使用許諾を得たに過ぎない。係争商標以外、指定期間満了前に、雷神社の第9類「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」等の商品における他の「雷神」文字商標の登録が認められておらず、また係争商標が存在したため、2020年11月20日の商標譲受以前には、「データ処理装置」と類似する「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」等の商品において、係争商標に類似する「雷神」商標を登録することは事実上不可能であった。
第三に、雷神社は「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」等の商品で実際に係争商標を使用している。再審段階で提出された第二組(雷神ブランド使用証拠)、第三組(公衆の雷神ブランドに対する認知証拠)、第四組(製品認証証拠)及び第五組(雷神商標拒絶通知書)等の証拠から、雷神社の商号が「雷神」であり、指定期間中一貫して自社製品の表示・宣伝に「雷神」ブランドを使用し、関連公衆も同社製品を「雷神」で認識していたことが証明される。雷神社は、「雷神」商標を使用するため、第9類において繰り返し「雷神」商標の登録出願を行ったが、係争商標によって障害されて登録できなかった。そこで、雷神社は商標の使用許諾や譲渡などの方法を通じて、積極的に係争商標の使用権を取得しようと努め、指定期間の終了間際にようやく係争商標の使用許諾を獲得した。また、前述の通り、提出された証拠からも、雷神社がすでに係争商標を「ノートブック型コンピュータ」「家庭用コンピュータ本体」「マウス」などの商品に実際に使用していることが証明できる。さらに、雷神社が再審段階で提出した、同社と贛州発展供給鏈管理有限公司、北京京東世紀貿易有限公司との間の製品販売契約などの証拠からも、指定期間後も雷神社が係争商標を継続して使用していたことが証明される。したがって、提出された証拠からは、雷神社が実際に係争商標を使用していたこと、およびその使用のために必要かつ合理的な努力を払ったこと、真実の使用意図を持っていたことを証明できる。
最後に、登録商標の連続3年間不使用による取消制度の趣旨は、商標権者に登録商標の積極的使用を促し、長期にわたって未使用の商標を整理して商標資源を有効活用することにある。係争商標が「データ処理装置」などの上位概念商品でのみ登録され、「ノートブック型コンピュータ」「マウス(コンピュータ周辺機器)」などの下位概念商品で登録されていない状況において、かつ雷神社が係争商標を実際に使用しており、真実の使用意図を有する事実を総合すれば、係争商標の「ノートブック型コンピュータ」「マウス(」などの商品における実際の使用は、指定商品「データ処理装置」に対する使用に該当すると認定できる。
弊所コメント
国家知識産権局が2021年に制定した『商標審査審理ガイドライン』には「係争商標を実際に使用している商品が、「類似商品・役務区分表」における規範的商品名称には該当しないものであるが、係争商標の指定商品と単に名称が異なるだけで、本質的には同一の商品である場合、又は実際に使用している商品が、指定商品の下位概念に属する場合、指定商品に対する使用とみなすことができる。」と明確に規定されている。
しかしながら、本事件において、雷神社が実際に使用していた商品「ノートブック型コンピュータ」「マウス」などは区分表における規範商品に該当するため、上記規則を直接適用することはできない。よって、最高裁判所はさらに、雷神社に真実の使用意図があること、および2020年11月20日に雷神公司が係争商標を譲り受ける以前には、同社が「データ処理装置」商品と類似する「ノートブック型コンピュータ」「マウス」などの商品において「雷神」商標を登録することは事実上不可能であったという客観的要因を十分に考慮した結果、「データ処理装置」商品における「雷神」商標の登録を最終的に維持した。
以上の判決は、出願人が指定商品項目を選択する際にも一定の示唆を与えるものである。出願人の実際の使用商品が規範商品でない場合、当該商品の上位概念商品を指定することができる。ただし、実際の使用商品と上位概念商品の双方が規範商品である状況では、上位概念商品のみを指定すると不使用取消のリスクが存在する。実際の使用商品が規範商品である場合は、上位概念商品と同時に実際の使用商品も指定することが望ましいである。
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