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3 December 2021

先行技術に「逆示唆」があるかについての判断

K
Kangxin

Contributor

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進歩性判断の「3ステップ法」では、先行技術に...
China Intellectual Property

進歩性判断の「3ステップ法」では、先行技術に「発明が実際に解決する技術課題を解決するために、区別技術的特徴を最も近い先行技術に用いる」技術示唆が開示されているかを判断することはポイントである。当業者が前記技術課題を直面する際に、このような技術示唆を見ると、当該保護を求めようとする発明を得るために最も近い先行技術を改良する動機があるようになる。

「特許審査指南」には、先行技術に技術示唆が示されていることに該当する場合についての説明がある。通常、「逆示唆」は、先行技術に明確に記載されており、実際に解決しようとする技術課題を解決するための先行技術の組み合わせを妨げる技術内容を指す。実践において、このような逆示唆は、特許権者が自社特許が進歩性を有していると抗弁する理由となる。

一方、保護を求める技術案では、上記のような先行技術示唆に逆する技術手段で技術課題を解決することが多い。

但し、どのような場合に先行技術に記載の内容が「逆示唆」に該当するかについて、「特許審査指南」には明確な説明がない。

先行技術に対象特許と逆な技術手段さえ記載されれば、必ず「逆示唆」があると看做されるか?請求項を得るための先行技術の組み合わせと改良を妨げる技術案は?また、実践において、「逆示唆」の有無を如何に判断するか?

次に、当所が代理した無効審判事例を例として、説明する。

事例

対象特許には、半導体発光素子の放熱構造が複雑な問題又は水平方向の熱拡散率が低い問題を解決するための半導体発光素子が開示されている。前記半導体発光素子は、発光素子1と、前記発光1を取り付けた主表面の第1リードフレーム2Aと、前記第1リードフレームを固定するための樹脂部3、7、及び、それらの間に介在する金属を含む導電層により前記第1リードフレームに結合された熱放射部材8を備えている。

このように、発光素子で発生した熱は、第1のリードフレームを介して放熱部に伝わりやすく、優れた放熱性能を備えた半導体発光デバイスとなる。

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対象特許

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証拠1

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証拠2

証拠1には、対象特許の大部分の特徴が開示されている。区別技術的特徴としては、「金属を含む導電層により前記第1リードフレームに結合された熱放射部材8、導電層が熱放射部材8と第1リードフレームの間に介在する。」ことである。

対象特許の明細書の記載によると、対応する技術案では、はんだ、AuSn化合物、樹脂と混合したAgペーストなどの「金属を含む導電層」で第1リードフレームと放熱部材を接合している。これに対して、証拠1では、第1リードフレームを金属体と接触するだけである。

よって、対象特許の実際に解決しようとする技術課題は、リードフレームから放熱部材までの熱伝導率を向上させることである。

証拠2には、「パワーエ部品2は、外部リード6に直接取り付けられ、パワーエレメント2と外部リード6、外部リード6と金属ブロック3は、それぞれ、はんだ20、はんだ21により結合されている。」ことが開示されている。

証拠2では、はんだでリードを金属ブロックに接合する。当業界で「はんだ」と呼ばれる材料は通常、スズ-鉛合金、スズ-銀合金、スズ-金合金などのさまざまなはんだを指す。溶接された金属の表面には、必ずはんだと金属の合金層を形成する。即ち、金属を含む導電層である。それの証拠2における役割は、外部リードから金属ブロックまでの熱伝導率を向上させることであり、区別技術特徴の請求項1における実際に技術課題を解決するための役割と同じである。

証拠2には、「パワーエ部品2は、外部リード6に直接取り付けられ、パワーエレメント2と外部リード6、外部リード6と金属ブロック3は、それぞれ、はんだ20、はんだ21により結合されている。」ことが開示されている。

証拠2では、はんだでリードを金属ブロックに接合する。当業界で「はんだ」と呼ばれる材料は通常、スズ-鉛合金、スズ-銀合金、スズ-金合金などのさまざまなはんだを指す。溶接された金属の表面には、必ずはんだと金属の合金層を形成する。即ち、金属を含む導電層である。それの証拠2における役割は、外部リードから金属ブロックまでの熱伝導率を向上させることであり、区別技術特徴の請求項1における実際に技術課題を解決するための役割と同じである。

よって、証拠2には、上記技術課題を解決するために当該区別技術的特徴を証拠1に用いる技術示唆が示されている。

特許権者は、「証拠1の背景技術に、熔接の過程で熱がLED部品に伝導されやすいため、その信頼性に悪影響を与えたことが言い及ばれた。したがって、証拠1に逆示唆が示されており、当業者が証拠2と証拠1とを組み合わせることを妨げることができる。」と主張した。

合議廷は、無効請求人の主張を支持し、次の意見を述べた。

証拠1には、「熱放射効率に関わるもう一つの方法は、LED部品の一部のリードフレーム端子と取り付けボードとの間の接触面積を増やすことである。これは熱放射の観点からは有益であるが、熔接の過程で熱がLED部品に伝導されやすいため、その信頼性に悪影響を与える。」ことが開示されている。上記の開示内容から見ると、証拠1には「熔接」による接合のデメリット(部品の信頼性に悪影響を与える)だけではなく、そのメリット(熱放射の観点からは有益である)も開示された。

当業者は、如何なる技術も、その発展と革新された過程で出た技術案には必ずメリットとデメリットの両方も含むことが知り得る。当業者は、当該技術案を改良する際に、解決しようとする技術課題を結び付て、様々な要素を総合的に分析、判断する。

即ち、当業者は、今後、様々な技術課題を解決するための技術案を選択する際に、必ず分析・判断する能力がある。

よって、当業者が証拠1に基づいて、熱放射効率を高めるために熔接の方式でリードフレームと熱放射部材とを熔接することには、障害がない。逆に、実際には、証拠1に技術指導が示されているため、特許権者の主張は成り立てない。

まとめ

総じて言えば、ある先行技術に逆示唆が示されているか否かと判断する際に、その先行技術にメリットとデメリットの両方とも有する場合、実際に解決しようとする技術課題に基づて、様々な要素を総合的に考慮して分析を行い、先行技術の全体から技術示唆又は逆示唆の有無を判断すべきである。

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.

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