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5 June 2023

事業範囲が異なれば、「不正競争」に該当しないのは本当?

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Kangxin

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多数の不正競争に係る判例を見ると、不正競争行為のほとんどは、競争関係にある同業種の事業者間で発生していることがわかる。侵害者
China Antitrust/Competition Law

 多数の不正競争に係る判例を見ると、不正競争行為のほとんどは、競争関係にある同業種の事業者間で発生していることがわかる。侵害者と被害者が同じ業界に属していない場合、侵害者、つまり被告は通常、両当事者には競争関係がないため、不正競争に該当しないというように抗弁する。プラクティスでは、「競争関係」の存在は、不正競争行為を判断するための一つの要件となるのでしょうか。

 我国の「不正競争防止法」第2条に「本法において不正競争行為とは、経営者が生産経営活動において、本法の規定に違反し、市場競争秩序を撹乱し、ほかの経営者または消費者の適法な権益を損なう行為をいう。」と規定されている。上記条項には、侵害者と被害者との間の競争関係の存在について直接規定されていない。しかし、既に2005 年に、最高人民法院第三民事法廷の首席判事である蔣志培は、「不正競争を判断するには、一般民事侵害行為の構成要件を満たすことに加え、競合関係があるか否かの審査も行うべきである。競争関係の存在は不正競争に該当する要件の一つである」 1と述べた。なお、「競争関係」は、広義と狭義がある。狭義の競争関係とは、同じ業界の事業者間、即ち、同じ競争分野に属し、同一または類似の商品やサービスを業とする市場主体の間で生じる競争関係のみを指す。広義の競争関係には、事業活動に交差、相互依存、またはその他の関連が存在すること、即ち、不正な手段で消費者を惹きつけたり、他の事業者の競争上の優位性を不当に損なったり、または自社に属さないはずの競争上の優位性や取引を獲得したりすることも含まれている 2。我国では、市場経済状況の変化に適応し、事業主体と消費者の利益を保護するために、「不正競争防止法」における競争関係が、広義の競争関係として認定されている。

 場合によっては、原告と被告が異なる業界に属しており、直接的な競争関係はないにもかかわらず、裁判所は、事件の具体的な状況に基づいて、両者に直接的な競争関係があると認定することもある。

 ミシュラングループ本社が浙江食叁味餐飲管理有限公司などを訴えた不正競争紛争の判決書において、原告のミシュラングループ本社(以下、「原告」)はタイヤメーカーであり、被告の浙江食叁味餐飲管理有限公司(以下、「被告」)は飲食サービスを業とする企業であり、両社はそれぞれ異なる業種に属する。原告が発行した「ミシュランガイド」は、ミシュランの星付きレストランやホテルを推奨するガイドブックであり、長年にわたる宣伝を経て、飲食サービス業界で高い知名度と評判を獲得している。「ミシュランガイド」で星付けられるのは、ある程度高品質で優れたである意味をし、そのレストランの品質とサービスに対する賞賛であるため、レストランの経済的利益を向上させることができると思われる。原告は、被告がホームページや実店舗の看板で「手頃な価格のミシュラン牛肩ロース」「小さなブランドが大きな理想を貫き、ミシュラン牛肩ロースを目指している」などの宣伝文句を使用しており、不当競争に該当すると主張した。一方、被告は、両社に競争関係がないため、不正競争行為には該当しないと抗弁した。

 裁判所が両者の間に競争関係があるか否か、不正競争行為が存在するか否かを判断する際、事業範囲が同一であるか否かのみで判断すべきではない。事業内容が異なるものの、その行為が不正競争防止法に規定された競争規則に違反する場合も、競争関係があると判断すべきである。本件訴訟では、被告が上記の宣伝文句を使用することは、実質的に不正の手段で自社の競争優位性を高めることである。被告の不当な宣伝文句の使用により、関連消費者の消費意思決定に影響を与えるとともに、原告の「ミシュラングルメスター」の評価基準にも悪い影響を与えているため、原告の合法的権益が損害されている。逆に、原告は当該不当な宣伝文句の使用により、自社の競争優位性を高めることができる。被告の上記行為は、実際に他の市場業者の知名度や評判を無断で利用して自社の競争優位性を高める不正行為である。よって、両社は競争関係があり、被告の行為が原告にとって不正競争に該当すると法院は認定した。

 上記判決からみると、上記の判決から、裁判所が競争関係の広義により解釈して適用したことがわかる。両社の事業範囲が大きく異なっており、重なるところはないが、被告は、原告の市場影響力を不当に利用し、消費者に誤った連想を与えることで自社サービスを宣伝したため、その行為が不正競争に該当すると認定された。

 市場経済の発展に伴い、不正競争行為はますます多様化されているため、司法実務において、競争関係の認定は広義で解釈され、事業範囲が同じか否かに限定されなくなっている。

Footnotes

1. 呂方:「司法保護の強化に関わる法律適用の問題―最高人民法院民事審判第三廷廷長蔣志培インタビュー」 『法律適用』の2005年第2期第33頁

2. 蔡偉:「不正競争紛争における競争関係を正確に把握する方法」

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