最近、最高人民法院の知的財産権法廷は、上訴人サンド(中国)製薬有限公司(以下、サンド社)と上訴人江蘇豪森薬業集団有限公司(以下、豪森公司)との特許権侵害訴訟で、「ジェネリック医薬品の特許保護期間中に、ジェネリック医薬品企業が現地医薬品集中調達プラットフォームを通じて関連する現地医薬品集中調達部門に企業および医薬品資格認証資料を提出するという申告行為が、特許法上の販売の申出行為に該当し、権利侵害の責任を負わなければならない」ことを初めて明らかにされた。

 本件訴訟は、特許番号が 99814202.6 であり、名称が「N-置換 2-シアノピロリジン化合物」である特許に関わっている。当該特許の請求項1に記載の化合物に対応する薬品の中国語一般名は「ビルダグリプチン」であり、主に糖尿病の治療に使用されている。ノバルティス株式会社は、1999 年 12 月 9 日に当該特許を出願し、2004 年 8 月 4 日に登録された。特許権者の許可を得たサンド社は、本件訴訟に関係する特許の薬品を中国で販売し、自社の名義で侵害行為に対して訴訟を提起する権利を有する。

 2019年3月6日、豪森公司の本件特許に対するジェネリック医薬品「ビルダグリプチン錠」(以下、被疑侵害品)が元国家医薬品監督管理局から販売承認を取得した。その後サンド社は、豪森公司が広州、福建、陝西、青海などの省市で医薬品の集中調達活動に参加する申請書を提出し、関連学会においてミネラルウォーターのボトルのステッカーを通して被疑侵害品を宣伝し、また同社のスタッフに侵害製品の営業担当者の採用情報をソーシャルソフト上に掲載させたことを発見した。サンド社は、豪森公司が特許保護期間中に上記の行為を行ったことは販売の申出行為に該当すると考え、豪森公司に対し訴訟を提起し、権利行使するための合理的な費用616,340元を自社に賠償するよう求めた。

 福建省福州市中級人民法院は一審で、下記のように判決を下した。同法院が管轄区域内、つまり福建省福州市で発生した侵害行為のみを審理する。豪森公司がオンライン調達申請書を提出したことは、福建省の医療機関に被疑侵害品を販売する意思の表明であり、販売の申出行為に該当する。豪森公司のスタッフがWeChatを通じて掲載した侵害品営業担当を募集する情報は、採用情報であり、被疑侵害品を販売する意思を示すものではないため、販売の申出行為に該当しない。したがって、上記情状に応じて、豪森公司が15万元の合理的な支出をサンド社に支払うというて判決を下した。

 一審判決が下された後、サンド社と豪森公司の両社とも、不服として、上訴した。最高人民法院は二審で、下記のように判決を下した。販売の申出が特許法に明確に規定された独立した侵害形態である。販売の申出に含まれる行為の種類は、開放性、多様性、柔軟性などの特徴がある。したがって、特許法第 11 条に規定する販売の申出行為の含意は、主観的側面と客観的側面の両面から理解する必要がある。具体的には、販売も申出行為の客観的側面について、特許紛争の審理に関わる規定に挙げられている「広告」「店頭展示」「見本市での展示」の3つの場合に限定されるものではなく、例えば、口頭、書面、物理的な実演、ウェブページの表示、その他感知可能な方法であっても、製品の流通準備や製品の商品化実現のための意思表示である限り、販売の申出行為とみなされる可能性がある。一方、販売の申出行為の客観的側面は、販売の約束の主観的な側面とは、行為者が如何なる特定または不特定の人物に製品を販売する意志があることを意味する。ジェネリック医薬品会社によるジェネリック医薬品特許権の保護期間中に、企業および医薬品資格認証資料を現地集中医薬品調達プラットフォームを通じて現地の集中医薬品調達部門に提出するという申告行為は、販売の申出行為に該当すると認定すべきである。一方で、当該申告行為は、今後の自社の関連するジェネリック医薬品の商業流通と商品化に備えるという意思表示である。一方で、当該申告行為は、不特定の者(競合他社、集中医薬品調達部門、潜在的な取引対象となる公的医療機関等)に自社のジェネリック医薬品を供給する意思を明確に表明していることを示している。なお、申告後に行政の承認が必要かどうか、申告した医薬品が最終的に集中医薬品調達プラットフォームに掲載されるかどうかは、いずれも前述の結論に実質的な影響を与えるものではない。

 本件における豪森公司の主張、即ち、たとえ本件に係る申告行為が販売の申出行為に該当するとしても、2008年に改正された特許法における医薬品及び医療機器承認の例外規定を適用して免責を免れるべきであるという主張に対して、最高人民法院は、下記のような意見を述べた。本項により調整されたのは、行政承認の申請に必要な情報を提供するために実施した「製造、使用及び輸入」行為、及び前記主体の行政承認の申請のために実施された「製造、輸入」行為である。2008年の第3次特許法改正で医薬品・医療機器の行政承認の例外規定が導入されたとき、販売の申出行為は、2000年の第2次特許法改正で既に導入されており、製造、販売等と並行して、独立した侵害手段として規定されている。立法者が明らかに販売の申出行為を例外の適用範囲に入れる意思はない。或いは、立法者が意図的に販売の申出行為を例外の適用範囲から除外している。

 本件訴訟の最終実体裁判の範囲について、広州、厦門、南昌、陝西省、青海省で豪森公司が実施した被疑侵害行為、サンド社が侵害行為を阻止するために訴訟代理人に委託した作業量とサンド会社が支払った合理的な費用との適合性、本件におけるサンド社のすべての請求が最終的にどれぐらい支持されるかなどの要素を総合的に考慮すべきである。よって、最高人民法院は最終的に、一審判決を取り消し、豪森公司がサンド社に合理的な費用30万元を支払うという判決を下した。

 本事件の審理を通じて、最高人民法院は、ジェネリック医薬品企業が集中医薬品調達活動に参加するために申告資料を提出する行為は、特許法上の販売の申出行為に該当し、相応の不法行為責任を負うべきであると法的に判断した。これにより、集中医薬品調達におけるジェネリック医薬品企業の行動境界をさらに明確にしたので、先発医薬品の特許保護の強化、集中医薬品調達の市場秩序の規範化、医薬品業界の高品質発展の促進に非常に有益である。

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