1 はじめに

 経済産業省は、2023年6月8日、「企業買収における行動指針(案)(企業価値の向上と株主利益の確保に向けて)」 1(以下「買収行動指針案」という。)にかかるパブリックコメントの受付を開始した 2

 買収行動指針案は、経済産業省内に設置された「公正な買収の在り方に関する研究会」(座長:神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)(以下「本研究会」という。)における議論等を通じて取りまとめられたものであり、今般、広く国内外の関係者からの意見を募集するものである。意見の提出期限は、2023年8月6日である。なお、買収行動指針案の参考英訳(「Guidelines for Corporate Takeovers(Draft)」3)も開示され、意見については、日本語のみならず英語での提出も受け付けている。

2 背景と趣旨

 経済産業省は、買収防衛策やMBO等について、その在り方やベストプラクティスを整理する指針および報告書を策定してきたが 4、近年では、現行の指針では取り上げていない有事導入型の買収防衛策の発動やその差止めをめぐる司法判断が相次いだほか、当初の買収提案を契機に第三者から新たな選択肢(対抗提案)が提示されるケースも増加している。また、国内への投資よりも海外 M&A 投資が選好される傾向が見られ、さらには、上場会社を取り巻く社会経済状況にも変化が生じている。

 このような動向を踏まえ、経済産業省は、買収をめぐる両当事者にとっての予見可能性を向上させることや望ましい姿を示すこと等を通じ、企業価値を高める買収がより生じやすく(そうでないものは生じにくく)なるよう、2022年11月に本研究会を設置し、買収に関する当事者の行動の在り方等についての検討を行ってきた 5

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Originally published by Shojihomu Co., Ltd.

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