スナップショット:アジアを拠点とする当事者のための、英領ヴァージン諸島における仲裁

はじめに

BVIは、現代的な仲裁に好意的な制度、現代的な仲裁の設備そしてBVI International Arbitration Centre(BVIIAC)という世界的な仲裁機関に支えられている、人気の高い仲裁地です。非常に尊敬されているBVIの裁判所の監督のもとに、あらゆるこのような仲裁に対してもBVIの法律に関する専門的知見を提供できる点も、安定的な国において紛争解決を検討している当事者に対して安心感を与えます。

アジアの企業、投資家、富裕層は、長年にわたり、BVIの裁判所やBVIの法律専門家を最も頻繁に利用してきました。その結果、アジア市場のユニークな特質に精通した現代的な仲裁機関や、アジアと結びつきのある紛争を定期的に処理する裁判官によって構成された監督者たる裁判所が存在することによって、BVIIACの利用者は、安心してこれを利用することができます。

現代的な仲裁法

BVIにおける仲裁は、2013年Arbitration Act(仲裁法)によって規律されます。この仲裁法は、UNCITRAL Model Lawの条項を採用していますが、この仲裁法で修正された箇所については、当該箇所が適用されます。このBVI仲裁の法的制度の特筆すべき特質には以下の点があり、この点が、BVIを魅力ある仲裁地にする要素といえます。

  1. 2014年5月25日より、英国政府は、外国仲裁判断の承認及び執行に関するニューヨーク条約( ニューヨーク条約)の受諾をBVIに対して拡張しました。このことは、BVIの仲裁判断がニューヨーク条約に加盟している168カ国において執行可能となったことを意味します。
  2. BVIの仲裁廷は、仲裁法に基づき広範な裁量を有しており、自らの管轄について判断したり、暫定措置を命じたり、予備保全命令を命じたり、仲裁廷が適切だと判断する費用や利益に関する決定をするための能力を有しています。
  3. 仲裁廷の許可を必要とせず、暫定措置の発令を申し立てるために、BVI Commercial Court に不服を申し立てることができます。
  4. 機密保持:別途当事者が合意しない限り、BVI仲裁手続またはBVI仲裁判断に関する情報を出版し、開示しまたは第三者に連絡してはなりません。
  5. UNCITRAL Model Lawにしたがって、仲裁判断を無効にする裁判所の裁量は非常に限定されています。これには、以下の根拠が含まれます。
    1. 仲裁条項に、一人以上の当事者が含まれていないこと
    2. 仲裁に関する適切な通知を欠くこと
    3. 仲裁条項の範囲外の事項について、仲裁判断が取り扱っていること
    4. 仲裁廷または仲裁手続の構成が、仲裁条項や仲裁法の条項に反すること
    5. BVI法上、仲裁することができない主題であること
    6. または公序
  6. 別途当事者が合意しない限り、BVIの仲裁判断は、最終で上訴不可能です。当事者は、仲裁の実施に対して、BVI Commercial Courtが監督権限を行使することができるようにする特定の条項を挿入することを、付加的に選択することができます。これらの条項は、以下の事項を裁判所が実施することを可能にするものです。
    1. 複数の仲裁を統合する命令をすること
    2. 当事者にとって相当なコストの節減につながるかもしれない、仲裁におけるあらゆる法的な問題について判断すること
    3. 深刻な瑕疵を根拠として仲裁判断を争うこと
    4. 仲裁判断から生じる法的な問題について上訴すること

BVIの裁判所は、BVIを仲裁の国際的なハブとして促進するために、仲裁に好意的なアプローチを採用しており、当事者による紛争を仲裁に委ねる選択について、これを尊重する重要性を理解しています。 1

仲裁地としてのBVI

BVIIACは、BVI IAC規則を管理する責任を負っています。これは、UNCITRAL仲裁規則をベースとしており、それゆえ、国際的な仲裁の基準を反映したものになっています。当事者は、BVI IAC規則を自由に仲裁条項に挿入することができる一方で、他方で、希望すれば、他の機関の規則をBVIの仲裁を管轄するものとして採用することを選択できます。逆に、当事者は、BVI IAC規則を、他の機関、例えば香港国際仲裁センターやシンガポール国際仲裁センターによって管理される仲裁条項の一部分とすることができます。BVI IAC規則18条2項は、仲裁廷に対して、仲裁廷が適切と考えるいかなる場所でも会合および評議を実施することを許可しています。このことは、すなわち、会合および審問は、もし当事者にとってより便利な場所とタイムゾーンがあれば、BVI以外の場所でも実施することができることを意味し、例えば、アジアを拠点とする当事者の場合がこれに該当するかもしれません。

その他の仲裁規則と異なり、BVI IAC規則17条6項では、別途当事者が合意しない限り、仲裁に関連するあらゆる事項は機密とするという、推定の原則が設けられています。この機密保持義務の範囲には、第三者が作成した書面であってパブリック・ドメインに既に属しないものを含んでおり、このことは、BVI IAC規則が、この機密の原則を維持しようとしていることの現れです。

コロナウイルスによるパンデミックによって国際的な渡航の機会が断絶された現在の状況下で、仲裁廷が、BVIの裁判所と同様に、28条4項に基づいて、ビデオ会議またはその他の電気通信による方法による審問への出廷を証人に対して許可することができることは、BVIの仲裁を最小限の途絶で進めることを確保する有用なツールです。

更に、BVIIACでは、190人以上の世界中の一流の仲裁人が仲裁のパネルに名前を連ねており、言語の能力や地理的位置を含む最も適切な専門を持った仲裁人を当事者が選ぶことが可能です。パネルでは、現在、18人のアジア太平洋を拠点とする仲裁人が名前を連ねており、アジアにおける仲裁の利用者が、アジアマーケットに深い理解を有する、当事者と近接した地にいる仲裁人を選ぶことができます。

BVI IAC規則の別紙Aには、契約上BVI仲裁を規定したい当事者のためのBVI IACモデル条項が記載されています。モデル条項の写しは、以下のとおりです(注:正文は英語であり、日本語は参考訳です)。

「本契約、その違反、解除または無効から生じまたはそれらに関するあらゆる紛争、論争または請求については、BVI IAC仲裁規則に基づく仲裁により解決される。」

「仲裁人の数は、(1または3)人とする。

仲裁地は(別途当事者が合意しない限り、英領ヴァージン諸島、トートラ、ロード・タウン)とする。

仲裁手続で用いられる言語は、(言語名)である。」

BVIの仲裁についてのご質問がございましたら、いつものオジエの連絡先にご連絡ください。喜んでお手伝いさせていただきます。

Footnote

1 L Capital KDT Ltd v Retribution Ltd (BVIHC(COM) 89/2015, 25 January 2016, Farara J) at §44.

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.