官民連携 ~ 機能強化 ~ 新PPP法をより良く機能するための包括的且つ累進的な太平洋パートナーシップ及びEUとベトナムとの自由貿易協定の活用

2015年に導入された官民連携(以下、「PPP」)に関する政令15/2015/ND-CP(以下、「政令15号」)は、ベトナムのPPP法が財務的に実現可能性の高いプロジェクトに近づくと法律評論家から高く評価されてきました。
しかし、実行プロセスにおいて、投資家がPPPを投資方法として選択することを阻む法的問題があり、これまでにない控えめなPPPプロジェクトになっています。例えば、政令15号は、プロジェクト契約(すなわち外国当事者及び政府機関保証契約を含む契約)の準拠法を外国法にすることを認めており、その他の旧PPP規則と比べると改善しています。しかし不動産関連については、土地法は解決されていません。
さらに、PPP法は政令レベルでしかない為、PPPプロジェクトに関する規制枠組みは、主に企業法、公共投資法及び入札法などが含まれており、そのほとんどは政府と民間投資家の間の投資連携または民間投資の代わりに公共投資を規制しています。PPP規制が主に政令レベルの為、投資家はまたPPP規制の安定性を懸念しています。PPPプロジェクトが完了するまでに数年を要する間に、政令レベルの規制は改正され、法の履行の際に投資家が混乱する可能性があります。国の機関もまた、これらのPPPプロジェクトを管理する上で、いくつかの困難に直面しています。ベトナム商工会議所(VCCI)の役員から共有された実際の話によると、政府は投資家とPPP契約を締結した後に、政策の変更の為、契約価値の決定を修正しました。その結果、土地価格は事前に合意した金額の14倍に上昇し、投資家に大きな損失をもたらしました。
計画投資省によると、2016年~2020年の間に、総投資額250兆ベトナムドンの598件登録済みPPPプロジェクトが予定されています。政令15号の欠点を考えると、別の政令に変わることなくこれらの数字を達成する事は難しいでしょう。そのような状況で、政令63/2018/ND-CP(以下、「政令63号」)は2018年5月4日に発行され、PPP実施における障害を取り除く為に2018年6月19日から施行されます。
政令63号 何が新しくなったのか?
資本金負担責務
投資家は、プロジェクト実施の為に資本の寄与及び動員の責任があり、具体的には、事業会社の資本金における投資家の出資比率は、以下のように決定されています。

• 総投資額1兆5千億ベトナムドンまでのプロジェクトの場合、投資家が維持しなければならない自己資本金は、総投資額の最低20%

• 総投資額1兆5千億ベトナムドンを超えるプロジェクトの場合

o 1兆5千億ベトナムドンまでの投資の場合
投資家が維持しなければならない自己資本金は、総投資額の最低20%

o 1兆5千億を超える投資の場合
投資家が維持しなければならない自己資本金は、総投資額の最低10%

政府側からの出資要件はありません。
プロジェクト承認当局
政令63号は、以下の当局がPPPプロジェクトを承認することを明確にしています。

• 国会は、重要な国家プロジェクトの投資政策を決定します。

• 首相は、以下のプロジェクトの投資政策を決定します。

o プロジェクトの総投資資本金額が国家資本から30%またはそれ以上、あるいは30%以下で、3,000億ベトナムドン以上を使用するA型プロジェクト

o BT契約を使用するA型プロジェクト

• 関連省庁大臣は、国会及び首相の承認権限に該当しない自らのプロジェクトの投資政策を決定します。

• 地方人民評議会は、以下のプロジェクトの投資政策を決定します。

o 首相の承認権限に該当しないA型プロジェクト

o 公的投資予算を用いたB型プロジェクト

o BT契約を使用するB型プロジェクト

• 地方人民委員会は、国会、首相及び地方人民評議会の承認権限に該当しない自らのプロジェクトの投資政策を決定します。
BTプロジェクトにおける支払い方法
BTプロジェクトを実施する際、投資家は好立地の土地に非常に関心を寄せています。しかし、そのような土地資金が次第に枯渇すると、BTプロジェクトは投資家にとって魅力的ではなくなるでしょう。政令63号は、インフラの為の土地交換に加えてその他の方法を追加しており、投資家は支払いを受けるためより多くの選択肢を有することができるでしょう。特に、投資家は経営権の譲渡、事業・サービスの利用などという形で支払いを受ける可能性もあります。
ベトナムにおけるPPPプロジェクトの機能強化のため、PPPプロジェクトで環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(以下、「CPTTP」)及び EUとベトナムとの自由協定(以下、「EVFTA」)の活用方法
対象となる政府事業体及び機関
政令63号によると、 PPP投資家の選定のための入札は、公共調達法に従います。ベトナムの公共調達法は、まだいくつか欠点がありますが、ベトナムはCPTTP及びEVFTAの政府調達の章で、入札を行う手続き、政府が特定の状況において公開入札を行うことを約束しています。投資家は現在ベトナムの政府機関による調達に参加する機会を持ち、もし権限を与えられた状況下で投資家にその機会を与えない場合、政府に対して申し立てをすることができます。
CPTTP及びEVFTAの両方は、特定の金額での特定のモノ・サービスの調達が公開入札対象となる政府事業体と機関のリストを作成しています。CPTPPは、リストの拡大を協定発効から5年以内のみとする一方で、EVFTAはより長い期間認めています(すなわち、15年)。
対象となる調達
次の基準を満たすモノ・サービスまたは任意の組み合わせの政府調達は、EVFTA及びCPTPP政府調達規則の範囲内に入ります。
基準 EVFTA CPTPP
中央政府による調達が合意の対象であるかどうかを決定する金銭的価値 協定発効から15年後
13万特別引出権(以下、「SDRs」)
(米貨換算額1,910万米ドル)

初期暫定基準値 150万SDRs 協定発効から25年後
13万SDRs
(1,910万米ドル)

初期暫定基準値 200万SDRs
中央政府による建築サービスの調達 初期基準値 6,520万SDRs
15年後 850万SDRs 初期基準値 4,000万SDRs
15年後 500万SDRs
対象となる機関 22の中央政府機関(公安省を追加)

42のその他の機関
国有企業2社(ベトナム電力総公社、ベトナム鉄道公社)及び、大学2校(ベトナム国家大学ハノイ校、ベトナム国家大学ホーチミン校)を追加

対象となる準中央政府
2都市(ハノイ及びホーチミン)を追加
リストの拡大は協定発効から15年以内 21の中央政府機関

38のその他の機関

対象となる準中央政府はなし
リストの拡大は協定発効から5年以内
中小企業の為の優遇措置 ほぼ対象外 価値が26万SDRsまたはそれ以下と推定されたモノ・サービスの調達にのみ適用

500人以上の常勤従業員を抱える中小企業には適用されない
オフセットの適用 契約の価値に基づく 対象となる調達の総額に基づく
政府の入札決定にどう訴える?
CPTPP及びEVFTAは、仲裁規則による紛争解決に応じて入札決定に対し、外国投資家がベトナム政府を訴えることを可能にします。違反者は、速やかに仲裁決定に従うために必要な全ての措置をとらなければなりません。不履行の場合、WTOのようにCPTTP及びEVFTAは、一時的な救済(補償)を認めています。
仲裁判断の施行
最終的な仲裁判断は、その有効性に関して地方裁判所に疑問の余地なく拘束力があり強制執行が可能です。これはベトナムにおいて撤回された外国仲裁判断の割合が様々な理由により比較的高いままであるという事実を考慮すると、投資家にとってメリットがあります。
結論
外国投資家がベトナムにおけるPPPプロジェクトの機能性を高める為に、CPTPPとEVFTAの要件を活用することは極めて重要です。これらの協定の基で、上記の基準値を超えるモノ・サービスの調達をする際に、特定のベトナム政府機関は公開入札を行わなければなりません。これらの機関が不適切な入札決定を下す場合、外国投資家は仲裁鉄続きに頼ることができ、ベトナムにおいて仲裁判断を完全に執行することができます。

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