本文では、日中両国の抵触出願(拡大先願)制度を比較して、両国の 抵触出願の認定に関する相違点を分析する。

中国の抵触出願制度について

特許法第二十二条第二款の規定及び「特許審査指南」には、発明又は実用新案の新規性の判断において、「如何なる部門又は個人も同様の発明又は実用新案について、出願日以前に国務院専利行政部門に出願しておらず、かつ出願日(出願日を含む)以降に公開された特許出願文書又は公告の特許文書が当該出願日に提出された特許出願の新規性を破壊する」と言う記載がある。新規性判断において、新規性を破壊する特許出願を「抵触出願」と称する。

上記内容から見ると、下記三点を満たせば抵触出願に該当する。

(i)先行の特許又は出願の出願日が後行の出願の出願日より早い。

(ii)先行の特許又は出願の公開日又は公告日が後行の出願の出願日以降(出願日を含む)になる。

(iii)先行の特許又は出願は如何なる部門又は個人より中国で提出されたものである。

日本の抵触出願(拡大先願)制度

日本特許法における「拡大先願」制度は中国の抵触出願制度に相当する。

「特許・実用新案審査基準」の記載によると、

他の出願が満たすべき形式的要件は次の通りである。

(i) 他の出願が本願の出願日の前日以前に出願されたものであること。

(ii) 他の出願が本願の出願後に出願公開等がされたものであること。

(iii) 他の出願の発明者が本願の請求項に係る発明の発明者と同一でないこと。

(iv) 他の出願の出願人が本願の出願時において、本願の出願人と同一でないこと。

(他の出願が拡大先願に相当する)

上記から見ると、日中両国の抵触出願制度における相違点は主に下記二点にある。

一、中国の抵触出願は公開又は公告日が本願の出願日以降(出願日を含む)である。これに対して、日本の拡大先願は本願の出願日以降に公開等されたものである。言い換えれば、 日本の拡大先願制度により、先行の出願の公開日等が本願の出願日と同日である場合、拡大先願に該当しない。

二、中国の抵触出願は出願人が如何なる部門又は個人でも該当である。これに対して、 日本の拡大先願は先行の出願の発明者が本願の請求項に係わる発明の発明者と同一でないことが必須であり、そして、本願の出願時において、 先行の出願の出願人が本願の出願人と同一でないことも必須である。

Originally published 28 April, 2020

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