PCT特許出願の翻訳文の誤訳訂正をどのように行うか

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PCT特許出願とは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、PCT)に従って提出された国際出願である。PCT出願を受理官庁に提出した後、出願人は指定した期間内&#
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1、前書き

PCT特許出願とは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、PCT)に従って提出された国際出願である。PCT出願を受理官庁に提出した後、出願人は指定した期間内に、当該出願の翻訳文を特許権を取得しようとする国の特許庁に提出することができ、かかる手数料を納付すれば、当該出願は指定国の国家段階に移行することができる。

PCT出願の中国国内段階への移行に際しては、出願書類はほとんど外国語で公開されるため、中国国内段階への移行時に、当該PCT出願を中国語へ訳して中国知識産権局へ提出しなければならない。そして、中国語翻訳文は完全で、原文に忠実なものでなければならない。

実際の操作において、外国語原文を間違って理解したり不適切に翻訳したりすることが原因で、中国国内段階へ移行する国際出願の中国語翻訳文に誤りが生じ、PCT国際公開書類の内容と合致しないことがある。これに対して、『特許法実施細則』の第112条および第113条は、翻訳文の誤訳訂正に関する救済手続きを規定している。

2、翻訳文の誤訳訂正を自ら請求する

『特許法実施細則』第113条によると、出願人は、提出した明細書、特許請求の範囲または図面中の文字の中国語翻訳文に誤りがあることを発見した場合、次に規定される期限内で翻訳文の誤訳訂正を自ら請求することができる。(1)国家知識産権局が発明特許出願の公開或いは実用新案権の公告に関する準備作業を完了する前(2)国家知識産権局が発行した発明特許出願が実体審査プロセスに入ったという通知書の受領日より3か月以内

また、出願人が翻訳文の誤訳を訂正する場合、書面による請求を提出すると同時に、規定の訳文訂正料を納付しなければならない。訳文訂正料について、方式審査段階では300人民元/回で、実体審査段階では1200人民元/回である。

3、国家知識産権局が発行した通知書に応答して翻訳文の誤訳訂正を行う

出願人は、国家知識産権局が発行した通知書の要求に基づいて翻訳文を訂正する場合、指定した期間内に翻訳文の誤訳訂正手続きを取らなければならない。期限が満了しても規定の手続きを取らない場合、当該請求は取り下げられたものと見なす。この指定した期間は、通常、該通知書を受領した日より2か月以内である。

また、実体審査において、審査官は、一般的には、外国語原文を照合しない。しかしながら、何らかの欠陥(例えば、明細書が特許法第26条第3款の規定に適合しないこと、或いは、特許請求の範囲が特許法第26条第4款の規定に適合しないこと)が、最初に提出された国際出願書類に存在しないが、翻訳文に存在することを審査官が発見し、審査意見通知書において存在する欠陥を指摘していれば、出願人は、翻訳文の誤訳訂正請求の手続きを行う必要がある。出願人が応答する際に提出した補正書類が、最初の中国語翻訳文に記載された範囲を超えているが、翻訳文の誤訳訂正請求の手続きを行わっていない場合、審査官は翻訳文の誤訳訂正通知書を発行する 1

4、注意事項

(1)翻訳文の誤りとは、中国語翻訳文と原文書類とを比較した場合、個別の用語、個別の語句、及び個別の段落が遺漏或いは不正確である情況を指す。中国語書類は原文書類と明らかに一致しない場合は、翻訳文の誤訳訂正による更正は認めない。中国語書類が原文書類と明らかに一致しなければ、出願人は、中国国内段階への移行手続きを再び行う必要がある。中国国内段階への移行期限が過ぎた場合、該出願は中国国内段階に移行できない。

(2)補正が、中国語書類に記載された範囲を超えると、上述した翻訳文の誤訳訂正に該当しない。この場合、通常、実体審査プロセスでは国際出願の外国語書類に対する中国語翻訳文の正確さを照合しない。つまり、中国語書類は外国語書類と同じ意味を持つことを示唆する。これに応じて、出願人による書類の補正は、実際には、中国語書類を根拠とする。補正後の書類は、中国語書類に記載された事項を超えた場合、特許法第33条違反であり、これは通常の特許出願と同様である。

(3)中国語翻訳文の一致しない箇所は、数式や化学式など言語でない部分である場合、翻訳文の誤訳として扱わず、出願人は補正のみをすればよく、翻訳文の誤訳訂正を請求する必要も、誤訳訂正料を納付する必要もない。

(4)国内段階に移行した後に分割出願を提出する場合に対し、もし実体審査段階で出願人が自ら元の出願の翻訳文に誤りがあって、その分割出願にも翻訳文の誤りが存在することを発見した場合、出願人は翻訳文の誤訳訂正手続きを行うことができ、このような訂正は最初に提出した国際出願に記載された範囲を超えてはならない。

(5)実際には、発明特許出願が実体審査段階に移行する通知書を受領した日より3か月以後、出願人は、後の審査意見への応答段階においても翻訳文の誤訳訂正を自発的に行うことができ、行われた訂正がPCT国際公開書類中の内容と一致すればよく、これは特許法第33条の規定に適合すると見なされるべきである 2

(6)PCT国際出願は、誤訳訂正手続きを行わずに中国語翻訳文の誤訳を訂正していれば、権利化後の特許の安定性に影響を与える可能性がある。

PCT国際出願が中国で権利化された後、国内の公衆は当該出願の授権公告書類を知ることができるが、審査過程における出願人の意見、および、出願人による補正の根拠を知ることができない。授権公告書類がPCT出願の中国語書類に記載された内容を超えたことを公衆が発見した場合、不当な行政行為と誤解する可能性があり、同時に、公衆は、該特許の補正が特許法第33条に適合しないという理由で、特許無効宣告請求を行う可能性がある 3。このため、授権公告される前に翻訳文の誤訳訂正手続きを行わなければ、権利化後の特許の安定性に影響を与え、特許権者が特許権を失うリスク及び行政コストが増加する可能性がある。

5、まとめ

実務において、審査官は、特許書類の補正に対して厳しく、そして、特許書類を自発補正できる機会が少ないため、出願人は、翻訳文の誤訳を訂正する機会を利用し、合理的な方法で特許書類の誤りを補正し、特許の安定性を高めることができる。

6、参考文献

1 『特許審査指南』. 第三部分第二章第5.7節.[M].北京: 知識産権局出版社,2010.

2 『新規事項の追加に当たるか否かの判断におけるPCT出願書類の作用に関する検討』. 劉瑞賢. [EB/OL]. https://mp.weixin.qq.com/s/LRlusbgReWksLOLfK5Y0Dw

3 『特許法実施細則第 113 条における翻訳文の誤訳訂正のPCT国際出願書類の修正に対する影響に関する検討』.周佳凝. [J]. 法制博覧,2015, (11): 190-191.

Originally published July 8, 2020.

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