UK: 英国の反贈収賄法

Last Updated: 26 January 2017
Article by Kaku Hirao, Mark Tudor and Yoshiaki Otsuki

 資源エネルギー業界は、他の業界に比べて贈収賄リスクが高い業界であると一般に言われている。これには種々な要因があるが、資源エネルギー事業が国を跨いで行われる場合が多いことや、先進国に比して贈収賄の発生リスクが高い新興国・途上国におけるプロジェクトが多いこと、さらにはプロジェクトの開発そのものに莫大な費用を要することなどが要因として挙げられる。特に昨今の、高度な企業統治及び法令の遵守が求められる事業環境においては、かような贈収賄の発生リスクを正確に理解しておくことは極めて重要である。

米国の外国贈収賄防止法(FCPA)が1977年に施行されたものであるのに対して、英国の反贈収賄法(Bribery Act 2010)は比較的新しい法令であるが、FCPAよりも広い範囲の贈収賄行為に対して適用され、現時点で存在する類似法令の中では最も厳しい法制と言われている。本ニューズレターでは、英国の反贈収賄法の概要と、それが日本企業の活動に対して及ぼす影響について解説する。

英国の贈収賄規制の概要について

英国の反贈収賄法における犯罪の構成要件は、以下の4種類に分かれている。すなわち、①贈収賄行為を未然に防ぐべき責務を怠った企業による犯罪(Corporate Offence。以下「企業犯罪」という。)、②「能動的」な贈収賄すなわち贈賄の罪(active bribery)、③「受動的」な贈収賄すなわち収賄の罪(passive bribery)、及び④外国公務員に対する贈賄の罪(bribery of a foreign public official)である(総称して以下「贈収賄罪」という。)。

前述のとおり、英国の反贈収賄法における犯罪は、米国のFCPAよりも広範囲にわたっている点にその特徴がある。特に、FCPAでは認められているいわゆるファシリテーション・ペイメント(公務員の定例的な業務に関して、その促進又は確保の目的で 支払われる金銭のこと。典型例として、空港の税関手続きを簡略化する目的で支払われる少額の金銭の授受など。)に関する免責規定が設けられていない点に留意が必要である。

なお、英国の反贈収賄法では、様々な専門用語が用いられているが、本ニューズレターにおいては、微細には入らずにその概要のみを伝えるために、これらの専門用語を可能な限り簡略な表現に落としている点に留意されたい。

1. 「企業犯罪」について

「企業犯罪(Corporate Offence)」の主体となり得る組織体は、以下の2種類である。すなわち、①英国において組成された会社及び組合(英国内で事業を行っているかを問わない。)、又は②英国において事業の一部を行っている外国法人及び外国組合である。

「企業犯罪(Corporate Offence)」は、当該企業、又は当該企業のために活動を行う「関連者(associated person)」が、当該企業の事業上の有利な地位を維持又は確保する目的で行った贈賄行為に対して適用される。ここで、「関連者(associated person)」という用語は、かなり広く定義されており、当該企業のために業務を遂行するすべての個人を意味し、当該企業の従業員、代理人、合弁事業のパートナー及び子会社等をすべて含む。なお、いわゆる役務提供者(service provider)が「関連者」に含まれるかどうかについては一義的な定義がないため、個別事情によって判断される。

なぜ日本企業が「企業犯罪」に留意する必要があるのか?

日本企業が英国の反贈収賄法における「企業犯罪」として断罪される可能性があるケースは、①日本企業が直接に又は支店を通じて英国内で事業を行っている場合、及び②日本企業の英国現地法人(子会社等)による行為の場合の2通りが考えられる。ここで、「企業犯罪」が成立するためには、賄賂の収受が世界中のどこで行われたかを問わないこと、賄賂の収受を実行した個人が英国に接点があったかどうかも問わないこと、さらに当該日本企業の英国現地法人(子会社等)が当該贈収賄行為に関与していたかどうかを問わない。したがい、たとえば、英国に現地法人を構える日本の企業のとある従業員が、南アフリカ共和国において賄賂の収受を行ったという事案であっても、当該日本企業が、英国の反贈収賄法の「企業犯罪」に罰せられる可能性がある。

「企業犯罪」の免責事由(違法性阻却事由)について

「企業犯罪」は、原則として無過失の責任である。すなわち、その成立のために当該企業における故意又は過失を要しない。他方で、反贈収賄法においては、当該企業が贈収賄の行為を未然に防ぐための「適正手続き(adequate procedures)」を実施していたことをもって抗弁(違法性阻却事由)とすることができると定めている。ただし、かかる「適正手続き(adequate procedures)」の概念については、以下に述べるとおり明確な定義がない点に留意を要する。

「適正手続き( adequate procedures)」の定義について

前述のとおり、何をもって当該企業が「適正手続き(adequate procedures)」を実施している(いた)と言えるかについては、反贈収賄法及びこれに関する法務省規則においても必ずしも明確な規定がなく、わずかに、同規則において、以下の一般的な指針が示されているのみである:

  1. 比例の原則
    当該企業が贈収賄行為に加担ないしは関与するリスクの程度に比例した、明確かつ実行が可能な手続きであること。
  2. 経営陣による関与
    取締役を含む当該企業の経営陣が、積極的に贈収賄行為を防止するような社内文化を構築するよう努めていること。
  3. リスクの査定
    当該企業において、記録に残る形式で、贈収賄行為の発生リスクの内容やその程度について定期的な査定を施していること。
  4. デューディリジェンス(監査)
    当該企業の事業に従事する個人に対する、贈収賄リスクの程度に比例した、適正なデューディリジェンス(監査)が行われていること。
  5. コミュニケーション(社内教育を含む)
    当該企業が、贈収賄のリスクの程度に比例して、その防止のための社内指針やこれに関する社内の諸手続きに関して、個々の従業員に対して、社内教育等を通じた十分な啓蒙活動を行っていること。
  6. モニタリング及びレビュー
    必要に応じて、社内の贈収賄防止措置とその改善方法について、適切なレビューを実施していること。

上述の法務省規則においては、結局のところ、「当該企業が適正手続き(adequate procedures)を踏んだかどうかについては、当該個別事案の事実関係を勘案のうえで裁判所が判断すべき事項である」と謳っているため、仮に当該企業の当時の経営判断において適切に実施されていた社内手続きが、後日裁判所によって、贈収賄の発生防止策としては不十分であったと判断される可能性がある。

前述のとおり、当該企業において、「適正手続き(adequate procedures)」が実施されていると言えるかについては、種々の要因(事業の内容・性質や、当該事業が行われている国の事情など)によって左右される。特に、資源エネルギー関連の事業については、資源開発のための許認可の取得等、資源国政府との間の折衝が頻繁に行われるため、他の業種と比して、企業が贈収賄行為に関与するリスクが比較的高いということが言える。したがって、上記の対リスク比例原則に照らせば、他業種に比べてより慎重な「適正手続き(adequate procedures)」の履践が求められるということになろう。

「企業犯罪」に対する罰則について

反贈収賄法における「企業犯罪」に対する罰則は厳格であり、罰金については上限が定められておらず、さらには利益の没収や入札応募資格の停止等の処分もある。

英国において贈収賄事件の捜査を担当するのは、Serious Fraud Office(略してSFO)と呼ばれる機関である。SFOは、一部の事案で、DPA(deferred prosecution agreement)と呼ばれる一種の司法取引を被告企業との間で締結する権限が認められている。これは、当該企業への罰則そのものは免責されないものの、適正かつ公平なものとして裁判所が認める条件の下で、当該罰則の適用を一定期間停止することができるという制度である。ただし、DPAが認められる対象は、SFOの捜査に対して協力的に応じた企業のみである。DPAは多くの場合、被告企業に対して、所定の罰金の支払いや金銭補償の実施、あるいは個人に対する犯罪捜査に当該企業が協力することなどの一定の条件を課すのが通常である。

本日現在までに、反贈収賄法で立件された事例は複数例存在するが、そのうちDPAが締結されたのは2事例のみである。そのため、裁判所の判断傾向に関する十分な先例があるとは言い難いが、当該2つの事例の概要については後述することとする。

贈収賄罪の罰則に関する法務省規則では、裁判所や捜査機関であるSFOが参照すべき罰則に関する手続き、具体的には、「企業犯罪」の結果として生じた個人損害に対する補償命令、当該犯罪の結果獲得された企業収益の没収(ただし検察官の請求による)、及び罰金の金額について規定している。罰金の多寡は、当該企業の有責性及び当該「企業犯罪」によって引き起こされた「実損」の程度によって左右される。被告企業の有責性が悪質と認められる事案においては、発生した「実損」の300%を基調として、250%から400%の範囲内で、種々の要素(情状酌量の余地等)を考慮して決定される。ここで「実損」とは、当該「企業犯罪」によって実際に得られた(あるいは得られる予定であった)企業収益として裁判所が認める金額を指すが、仮に証拠関係から「実損」の金額が明らかでない場合には、当該「企業犯罪」に関連のある製品ないし事業から得られた全収益の10%から20%の間で適切な金額を「実損」として見做すことができる。

裁判所は、犯罪収益の没収や、適正な社会的懲罰の有無、さらには罰則の適用による萎縮効果等の種々の波及効果を勘案して罰金の金額を決定しなければならない。

この点、過去に英国の裁判所は、法定で16.37百万ポンドから26.2百万ポンドの範囲の罰金の可能性があった事案(直近のDPA締結事案である。)において、罰金の金額及び犯罪収益の没収額の総額が6.55百万ポンドに達していることなどに鑑みて、比較的微少な罰金のみを課した。かかる裁判所の判断は、被告企業の資金力(法定の罰金が課された場合には倒産の危険があったとされる。)等の波及効果を広く勘案したものと評価されている。

これに対して、最初のDPA締結事案であるStandard Bank事件においては、より高額な罰金が課されている。当該事案で、被告企業(Standard Bank)は、①罰金及び犯罪収益の没収として25.2百万米ドルを英国政府に対して、②補償金として7百万米ドルをタンザニア政府に対して、さらに③330,000ポンドをSFOの捜査費用及びDPAの締結に要した費用として、それぞれ支払うことに合意している。

2. 贈収賄の罪について

贈収賄の罪の構成要件

英国の反贈収賄法における贈収賄の罪が成立するのは、以下の2つの場合である。すなわち、①贈収賄の実行行為の一部が英国内で行われた場合、又は②「英国と近しい関係性を有する者」が英国外において贈収賄行為を行った場合である。ここで、②の「英国と近しい関係性を有する者」には、英国の市民権を有する個人、英国に居住している外国人及び英国の法律に準拠して設立された法人(日本企業の英国子会社等)が含まれる。

「企業犯罪」とは異なり、贈収賄の罪は故意犯であり、その成立のためには、行為者において故意があったことの立証が必要である(下記参照)。

2-1. 贈賄の罪

贈賄の罪(active bribery)は、ある個人(以下「A」という。)が、公務員である個人(以下「B」という。)に対して、Bによる「不適切な職権行使(improper performance of relevant function or activity)」に対する見返りとして、何らかの経済的利益(以下「賄賂」という。)を、直接又は他人を介して供与し、又は供与を申し出若しくは約束することをいう。なお、贈賄の罪は、Aにおいて、Bが賄賂を収受する行為そのものが「不適切な職権行使」に該当するということを認識している場合にも同様に成立する。

上記の贈賄の罪において、「不適切な職権行使(improper performance of relevant function or activity)」とは、一般の英国民が当該公務員の職権・職能に対して通常抱くであろう合理的な期待を裏切るような作為又は不作為をいう。ここで、「職権(relevant function or activity)」とは、①公共的な性格を有する職権・職能、②事業、貿易若しくは専門知識に関する活動、③雇用関係に基づく活動、又は④特定の集団の利益のための活動のいずれかであって、信義誠実に基づいて、あるいは公平又は公正に行われるべきことが期待されるような業務をいい、英国と関係性がある業務であるか、また、英国内で行われた業務であるかを問わない。

なお、贈賄の罪は、当該職権・職能を行使する権限を有する公務員本人に対する賄賂の供与ではなくても成立する(当該公務員の親族に対する利益供与等)。また、贈賄者であるAからの直接の供与ではなくても、たとえば、代理人等を通じた供与であっても、同様に成立する。

2-2. 収賄の罪

収賄の罪(passive bribery)は、ある個人(以下「C」という。)が賄賂を要求し、又は収受することに合意し、若しくは実際に収受した場合であって、かつ、以下の4つの要件のいずれかに該当する場合に成立する。すなわち、①C若しくはその他の者において将来「不適切な職権行使」を行う見返りとして賄賂の収受行為(賄賂の要求及び収受の合意を含む。以下同じ。)が行われた場合、②Cによる賄賂の収受行為そのものが「不適切な職権行使」に該当する場合、③すでに行われた「不適切な職権行使」の対価として賄賂の収受行為が行われた場合、又は④賄賂が供与されることを期待して、若しくはCによる賄賂の収受行為の結果として、C若しくはCの指示に基づくその他の者において「不適切な職権行使」が行われた場合である。

上記いずれの事例においても、Cが直接に又は第三者を介して賄賂を収受したかを問わず収賄の罪が成立する。また、当該賄賂の収受行為が、Cの利益のためであっても第三者の利益のためであっても、収賄の罪が成立する。また、②、③及び④のケースにおいて、C(又は④の場合にはCの指示に基づくその他の者)が、当該職権の行使が不適切なものであるということを認識していることは不要である。

2-3. 外国公務員贈賄罪

外国公務員贈賄罪は、事業上の利益を維持し又は獲得する目的で、外国公務員(foreign public official)に対して一定の影響力を及ぼすことを目的とする行為によって成立する。具体的には、①ある個人(以下「D」という。)が、直接に又は第三者を通じて、外国公務員(foreign public official)又はその指示にかかる第三者に対して、経済的ないしはその他の利益の供与を申し出、約束し又は供与を実行した場合であって、かつ②当該外国公務員が明示的な法令に基づき当該利益供与を受ける権限を有していない場合に成立する。ここで、「外国公務員(foreign public official)」の概念については、反贈収賄法において、詳細かつ広範囲な 定義が規定されている。また、②の要件に関して、いくつかの国においては、公務員による利益の収受を明示的に許容しているところもある(たとえば、石油開発の権益に関する入札の審査過程において、現地職員の雇用や現地の学校・病院等の建設等の事業に対して入札者が提供する金額の多寡を、審査の考慮に入れることは許容されている。)。

なお、「影響力を及ぼす」の具体的な内容は、当該外国公務員による作為によるものか不作為によるものかを問わない。したがい、例えば利益供与者であるDに対して不適法に政府の許認可を与える場合(作為)のみならず、Dによる許認可の違反行為を意図的に見逃すような場合(不作為)にも成立する。また、当該利益供与を受けて、実際に当該外国公務員が何らかの行為に及んだという結果までをも要求するものでもない。

2-4. 贈収賄罪に対する罰則

贈収賄罪で有罪とされた個人に対する罰則は、10年以下の懲役又は金額無制限の罰金である。企業の従業員による贈収賄行為に同意し又はこれを黙認した上級職(取締役、執行役員、総務部長など)にも同様の罰則の適用があり得る。なお、当該企業は、贈収賄の罪に関しても、前述の「企業犯罪」と同様、当局とDPA(deferred prosecution agreement)に関する交渉を行うことができる。

3. 推奨される措置

3-1. 贈賄防止のために企業が行うべきこと

上記で述べたとおり、「企業犯罪」は、原則として無過失の責任であるが、反贈収賄法においては、当該企業が贈収賄の行為を未然に防ぐための「適正手続き(adequate procedures)」を実施していたことをもって抗弁(違法性阻却事由)とすることができると定めている。「適正手続き(adequate procedures)」の概念については、明確な定義がないが、企業が上記で述べた一般的な指針(6原則とも呼ばれる)を参考に自社の贈賄防止体制を見直すことは有益である。これは、企業が「適正手続き(adequate procedures)」を実施していたとの抗弁になり得ることはもとより、そもそも役職員が贈賄に手を染めることを未然に防止することも可能となるからである。

また、十分な贈賄防止体制を構築することは、他の英国当局との関係で有益となる可能性もある。たとえば、米国当局によりFCPA (Foreign Corrupt Practices Act)違反事件の捜査・訴追が行われる場合、企業において贈賄防止体制が構築されていたという事実は、企業の刑事責任を軽減する事情となる。

3-2. 贈賄防止体制を構築する上でのポイント-リスクベース・アプローチ

いわゆる6原則において、(1)比例の原則及び(3)リスクの査定が掲げられていることからも、明らかなように、贈賄防止体制を構築する前提として、企業が事業活動を行う上で潜む贈賄リスクを評価し、当該リスクに応じた防止策を講じることが重要である。最近、経済産業省が改訂した外国公務員贈賄防止指針においても、リスクベース・アプローチによる対策の重要性が強調されている。

贈賄リスクは、企業が事業活動を行う国や地域によってさまざまである。一般的には、アジア、中東、アフリカ及び南米などについては、贈賄リスクが高いとされているが、より詳細に贈賄リスクを判断する上では、国際NGOであるTransparency Internationalが毎年公開しているCorruption Perception Indexなどを参照することも考えられる。

また、ビジネスの内容によっても、贈賄リスクはさまざまである。経済産業省の外国公務員贈賄防止指針においては、以下の活動は贈賄リスクが高いものとされている。

  1. 現地政府からの許認可の取得・受注や国有企業との取引などに関して助言や交渉を行う事業者(エージェント、コンサルタント)の起用・更新、
  2. 高リスクと考えられる国・事業分野におけるジョイントベンチャー組成の際の相手先の選定や、高リスクと考えられる国・事業分野における SPC の利用、
  3. 高リスクと考えられる国・事業分野において当該国の政府関連事業実績の多い企業の取得(株式の取得等)
  4. 受注金額や契約形式等から勘案して贈賄リスクが高いと考えられる公共調達への参加、
  5. 外国公務員等に対する直接、間接の支払を伴う社交行為

さらに、世界中に存在する事業拠点における贈賄リスクを正確に把握する上では、実際のビジネスの実情を知る必要がある。そのため、一部の企業においては、贈賄リスクを把握する目的から、海外の事業拠点の役職員に対してアンケート調査を実施したり、必要に応じてインタビューを実施するなどして、実際のリスクを把握しており、このような取組は参考となると考えられる。

3-3. 贈賄防止体制を構築する上でのポイント-デューディリジェンス

実際の摘発事例を見ると、贈賄の多くは、企業そのものではなく、企業が起用した現地のエージェントやコンサルタントによって行われることが多い。エージェントやコンサルタントが贈賄をした場合、企業の役職員が「知らなかった。」と主張しても、その抗弁が当局から受け入れられることは少ない。したがって、エージェントやコンサルタントを起用するにあたってのデューディリジェンスが重要となってくる。デューディリジェンスを実施するに当たっても、上記で述べたリスクベース・アプローチの観点を踏まえ、メリハリを利かせた確認を行う必要がある。エージェントやコンサルタントを起用する国や地域、ビジネスの内容によっては、贈賄のリスクが高いと判断し、単に質問票を送付するだけでなく、調査会社等を起用したうえでそのバックグラウンドをチェックする必要が生じる場合もある。

エージェントやコンサルタントを起用した後も、彼らの行動には注意を払う必要がある。たとえば、エージェントやコンサルタントから、報酬の増額や追加費用の支払いを求められることがあるかもしれないが、そのような場合には、その理由を子細に確認する必要がある。仮に彼らが贈賄をするリスクがあると感じた場合には、証拠に残る形でこれを厳重に禁止し、もしそれでも懸念が残るようであれば、契約解除も含めた対応を検討する必要がある。

3-4. 贈賄防止体制を構築する上でのポイント-経営陣の関与及び役職員の教育

贈賄が長年社会的な慣行として受け入れられていた国や地域は多い。そのような慣行が直ちになくなることはなく、これらの国や地域で仕事をしている役職員は、日々、贈賄のリスクと向き合っている。そのような状況にある役職員に対して、単に「贈賄をしてはならない。」と命じることは、効果的ではない。「実情を知らない本社が綺麗ごとを言っている。」と受け止められる可能性があるからである。そのため、贈賄防止体制を構築する上では、経営陣が自ら率先して贈賄防止に取り組むことを明らかにする必要がある。その上で、現地の実情を把握し、時には、現地の役職員と議論をしつつ、贈賄防止体制を構築することが有効である。上記で述べたとおり、リスク評価の過程でアンケートを実施したり、インタビューを実施することは有用であるが、そのようなプロセスを経ることにより、現地の役職員は、企業が真摯に贈賄防止体制を整えようとしていることを感じることができるし、また、現地の役職員との議論を通じて、実務的な贈賄防止体制を構築することも可能となると考えられる。

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